不動産経営を行う上で、銀行は重要なパートナーです。銀行からお金を貸してもらえなかったら物件は買えません。だからと言って、下手に出て過剰な気遣いをするオーナーがいますが、気遣いをするから貸してもらえる、というのは思い込みです。立場は対等です。必要以上に卑屈になることはありません。
1.融資は決算書ありき
金利を下げたい、融資を受けたい。お金を借りる側からすれば、要望を聞いてもらうために様々なことを考えます。ゴルフに誘う、カラオケに行く、付け届けをする・・・。
しかし、銀行が貸すか貸さないか、金利を下げるか下げないかは、先ずは決算書ありきです。
そのような気遣いをするより先に、決算書磨きに専念することです。
仕事のできるいい経営者だと思われても、担当者は3年、支店長は2年で変わります。何十社と取引先がある中で、定性的な評価の引継ぎなど無いと思っておいたほうが正解です。
「あの時、面倒見てあげた」「取引に協力してあげた」
協力したほうはそれをずっと覚えていますが、銀行側は覚えていませんし、引き継がれません。
2.銀行との「お付き合い」
融資以外のいわゆる「お付き合い」を銀行から要請された経営者の方も多いと思います。
ちなみに経営者でもある私のお付き合いをご紹介します。
クレジットカード
私は銀行系クレジット会社にさしたるメリットは感じていません。基本はパスです。
ブラックカードやプラチナカードは銀行の営業担当者を経由すると、審査は緩くなります。これを望まれる方は相談されればいいと思います。
投資信託
断ります。運用と融資は別です。
但し、NISAを活用した投信積み立てに関しては、インデックス型のコストの安いファンドを組み入れています。証券会社の方が種類多いでしょうが、この程度のお付き合いは許容範囲です。
個人型確定拠出年金
メインにお付き合いしている銀行の品揃えが充実していることもあり、そちらの海外株式インデックスファンドを契約しています。
定期預金
融資を条件に預金を要請する行為は、優越的地位の濫用・歩積み両建て違反です。
但し、多額の融資を受けていながら、預金は借りてない銀行にあるというのは経営者として常識的な意味でのスタンスを問われます。私はバランスを考えながら、“そこそこに”置いています。
火災保険
融資の際、銀行関連の保険会社を紹介されます。わたしは、特定の保険代理店があると、基本お断りしています。不動産賃貸経営において、火災保険は重要です。コストコントロールの肝といっても過言ではありません。やる気のない一丁上がりの人がパートナーでは、経営に大きく影響します。お付き合いで契約したとしても、1年でとどめ、自前の代理店さんに契約し直しています。
融資要請
期末月近くになると、色んな案件が持ち込まれます。銀行員はいわゆる「金貸し」であって、賃貸経営のプロではありません。お金を借りられる物件がいい物件とは限りません。賃貸経営のプロは皆さん自身です。自らの物差しを明確に持ち、是々非々で対応しなければなりません。
バブル時代の過去を思い出すまでもなく、自分の頭で考えず、他人に勧められるままに投資を行うことがいかに危険か。肝に銘じなければなりません。
3.さいごに
銀行担当者や支店長がお金を貸すかを決めるのではありません。
ノルマ達成に協力的だから融資するのでもありません。
先ずは決算書。そこでの格付けありきです。
以前のコラムでも書きましたが、
営業利益を上げる
自己資本比率を上げる
定期的なコミュニケーションを心掛ける
銀行は格付けの高い会社に貸したいし、低いところには貸したくない。
それだけです。
「銀行サマサマ病」の患者になる必要は全くありません。
格付けの上がる決算書の作り方については、次回お伝えします。
元メガバンク支店長 菅井敏之氏
三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンス事業に従事した後、支店長を歴任。
48才で銀行を退職。起業し、アパート経営に力を入れる。現在は年間7000万円の不動産収入がある。
銀行員としてお金を「貸す側」、不動産投資家としてお金を「借りる側」、どちらの視点も持つため、講演やセミナーでも一躍人気講師になった。
初の著書『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム 2014年3月)は40万部を突破。