損をしない! 売買契約を結ぶ際に知りたい基礎知識を解説
不動産を取引する際に欠かすことのできない、売買契約の締結。
売買契約は、一度締結してしまうと簡単には解除することができません。そのため、契約内容をしっかりと確認し、納得のいく条件で締結する必要があるのです。
この記事では、中古マンションを購入する際の売買契約について触れていきます。
売買契約の基礎知識、締結までの流れ、締結時に支払う手付金についての解説をします。一般的にあまり馴染みのないことばかりなので、事前に目を通しておくと安心ですよね。
売買契約は、最終的には当人同士の自己責任で交わされるもの。この記事を参考にして、後悔のない売買契約を結んでください。
目次
売買契約とは?
売買契約とは、財産権を持っている売り手が買い手からの代金を受け取るとこによって所有権を買い手に移すことです。
「売買契約」と聞くと、不動産のみの契約であり、あまり馴染みのないことだと思うかもしれません。
しかし実際は、あらゆるところで売買契約が結ばれています。スーパーやコンビニなどで商品を購入する場合も、代金の引渡しによって契約が完了する簡単な売買契約が結ばれているのです。
不動産の売買契約は取引する金額が大きいので、簡単に済ませて後からトラブルになってしまうことも珍しくありません。そのため、売り手と買い手の口約束だけで行うのが難しい契約ともいえます。
そこで、お互いの意思表示として契約書に内容を残し、お互いが納得した上で売買契約が成立していきます。
覚えておきたい! 売買契約を結ぶ際の注意点
不動産の売買契約書は、物件の詳細だけではなく「契約解除の方法」「代金の支払い方法」「不動産会社への仲介手数料」など売買全般について記載されています。
売買契約を締結してしまうと内容について理解していることになり、後から「知らなかった」と主張することは難しくなります。
売買契約は一度きりの重要なものなので、しっかり納得した上で進めていくことが大切です。
基本的に自由な締結が可能
売買契約は、売り手と買い手の双方の合意があれば、基本的には自由に結ぶことができます。「何を購入するための契約か」、「誰を相手にして契約するか」については本人同士が自由に決めることができるのです。ただし、すべて自己責任で行わなければなりません。
そのためには、思い違いや不明瞭な部分がないように契約者自身が十分に確認してから契約を結ぶことが大切です。
一度締結すると、簡単に解除できない
一度締結すると簡単に解除ができません。契約書に捺印した後に、「気分が変わったので売買契約を白紙に戻して欲しい」ということは難しいのです。簡単に契約解除はできないものだと理解した上で、売買契約にのぞみましょう。
契約前に説明される「重要事項説明」とは?
売買契約を締結する前に重要事項を説明することは、宅地建物取引業法という法律によって義務付けられています。重要事項の説明は、宅地建物取引士の資格を有した不動産会社の担当者により行われます。
売買契約締結前に行われる重要事項説明は、本当に不動産を購入するかどうかを判断するための最終段階です。不明な点や疑問点がある場合は、遠慮せずに不動産会社の担当者に質問しましょう。きちんと納得した上で売買契約を締結しなければ、後からトラブルの原因になるかもしれません。
重要事項説明の内容は、物件の所在地や面積といった「登記簿に記載されている物件事項」、売買契約においての代金の支払い方法や支払時期・契約解除に関する説明などの「取引条件に関係する事項」が含まれます。
重要事項説明でのチェックポイントについて
専門的用語が多いため、一見難しく感じる重要事項説明。
その中でもしっかり確認しておきたいのは次の項目です。
- 登記簿に記載されている事項と相違はないか
- 抵当権など権利関係について
- 購入代金以外の清算金など支払方法について
- 契約の解除について
- 違約金、損害賠償について
- 手付金の保全措置がとられているか
- 住宅ローンについての記載があるか
- 瑕疵担保責任について
- マンションの場合は共用部分、専有部分の詳細について
- 管理費や修繕積立金などの負担金について
以上の10項目を中心として、重要事項をきちんと理解したうえで、最終的な判断をしましょう。
「重要」なのに契約直前に…?!
一度見ただけでは理解が難しい重要事項説明書ですが、あいまいなまま印鑑を押してしまったとしても、自分の責任になってしまいます。重要だからこそ、じっくりと読んで考えたいところ。しかし、重要事項の説明は、売買契約の締結と同じ日に行うケースが多く見られます。
実は、重要事項説明は「契約前に」と法律で決められていて、契約前であれば直前でもよいことになっています。重要事項であるにもかかわらず、売買契約の直前に行われることは珍しくありません。
重要事項説明書の内容の説明をしてもらったうえでサインをすることは、理解している証になってしまいます。つまり、「あまり理解できなかった」「疑問点があった」と後から言っても通用しないのです。トラブルを防ぐためにも、納得できないことがあれば、遠慮せずに質問していく姿勢が重要です。
もし、当日に初めて重要事項説明書を確認することに不安があるならば「事前に重要事項説明書のコピーをもらえないか」「契約日とは別日に説明してもらえないか」と不動産会社へ申し出てみてもいいでしょう。
売買契約締結までの流れ
中古マンションを購入する際は、理想の物件を見つけてすぐ購入まで至るのはなかなか難しいものです。
多くの人は時間をかけて理想の住まいを探して慎重に候補物件を選ぶため、売買契約までは長い道のりになるでしょう。
そこで、どのような流れで売買契約を締結するのかを知っておきましょう。
手順1.情報収集・不動産会社へ問い合わせ
インターネットの不動産情報サイトで物件情報を閲覧する、不動産会社に問い合わせるなど、理想の住まいを探すための情報収集をします。
手順2.購入物件の見学
条件に合う物件が見つかったら、実際に内覧会などへ参加し、見学してみましょう。
インターネットやチラシを見ているだけでは把握できない点も数多くあるはずです。実際に物件を見ると「購入したい」という気持ちになるため、しっかりと見学しておきましょう。
手順3.購入申込書の提出
購入申込書は、買い手の希望を表した書面です。
購入金額や引渡しの希望などを記載し、売り手へのアプローチをして購入への希望を示します。この状態のときには、売り手に購入条件の申し入れをしているだけで、まだ売買契約は締結していません。
手順4.住宅ローンの事前審査
マンションを購入するには大きなお金が必要となるため、住宅ローンを利用する方がほとんどでしょう。一般的には、購入申込書でお互い売買する意向が決まれば住宅ローンの事前審査をします。住宅ローンの本審査前に事前審査を済ませておかなければならず、本審査は売買契約後になります。
手順5.重要事項説明
次に、重要事項の説明を受けましょう。
契約前に物件の詳細情報や取引内容、売買代金以外の金銭負担などを書面で説明を受けることを重要事項説明と言います。
詳しくはこちら:契約前に説明される「重要事項説明」とは?
一般的には売買契約と同じ日の、契約書を交わす直前に説明を受けることになるでしょう。
手順6.売買契約の締結
重要事項説明を受けた後に、売買契約の締結を行います。
手付金を事前に振り込んでおいてから契約書に記名押印をする場合もあれば、契約書に記名押印をしてから現金や預金小切手を手渡す場合など、実務的に前後することがあります。
売買契約の締結は、この一連の流れの中で最も重要です。
簡単には解除できないので、十分な確認をし、納得のいく契約を結びましょう。
手順7.住宅ローン申込み
住宅ローンの本審査の申込みをします。
手順8.決済・引渡
売買契約時に手付金として支払った金額を差し引いた残代金を決済します。大きな金額が銀行から買い手へ、そして買い手から売り手へと動くため、一般的には買い手が利用する住宅ローンを取り扱っている金融機関で行われます。これは、買い手の住宅ローンの融資金が決済の当日に買い手の口座へ振り込まれ、そこから支払いをするためです。
決済が確認できれば、引渡しとなります。
売買契約当日に用意しておくもの
売買契約前には、重要事項説明を受け、売り手と買い手の双方に問題がなければ売買契約が結ばれます。売買契約当日はかなり緊張するという方が多いはずです。
大事な契約だからこそ、慌てることのないよう事前に準備をしておきましょう。
基本的には、不動産会社の担当者から「契約当日に準備すべきもの」の説明を受けます。金銭の支払いもあるので、金額についてはしっかりと聞いておくべきでしょう。
契約当日に不備があると契約がスムーズに行われません。不明点があればしっかりと確認したいものです。特に、金銭については売買契約の数日前までには、準備をしておきましょう。
売買契約当日に必要なものは次の通りです。
- 印紙代
契約書に貼る印紙は、一般的には不動産会社で購入するので買い手が準備する必要はありません。ただ、印紙代は売買契約当日に請求されますので、現金を準備しておきましょう。
- 印鑑
「契約」と聞くとイメージ的には実印と思いがちですが、売買契約のときは認印でも問題ありません。ただし、住宅ローンを利用する場合には実印が必要になります。
いずれにしても、不動産会社からの指示に従うようにするといいでしょう。
- 身分証明書
運転免許証や健康保険証など、本人であることを確認できる書類が必要です。
- 手付金
売買契約には、「契約した証」となる手付金が必要です。「内金」「着手金」と呼ばれることもあります。
- 仲介手数料
不動産会社が仲介した物件の売買契約では、仲介手数料が発生します。仲介手数料の支払い方法はさまざまあり、「決済時に全額」が原則と言われていますが、「契約時と決済時にそれぞれ半分ずつ」という不動産会社もあります。仲介手数料については、支払い時期や金額について確認しましょう。
手付金とは?
不動産の売買契約のときには、買い手から売り手に対して購入代金の一部を契約時に「手付金」を支払います。
手付金の金額は物件価格に応じて異なりますが、目安としては購入価格の5~10%と考えておきましょう。売買契約が白紙に戻ることなく取引が無事に行われた場合は、最終的に購入代金から手付金を差し引いた残金を支払うことで決済となります。
手付金には、3種類あります。
- 証約手付
- 解約手付
- 違約手付
それでは、ひとつずつ説明していきます。
証約手付
契約が成立したことを証明するために行う手付です。
解約手付
不動産売買契約で行われる手付は、主にこの「解約手付」です。買い手の都合により売買契約を解除する場合は、支払った手付金の返済を売り手に求めないことになります。
逆に売り手の都合で契約解除に至った時には、手付金の2倍の金額を買い手へ返還しなければなりません。
違約手付
売買契約書に記載された約束が守られていないなどの契約違反(債務不履行)があった場合、違約没収されるものを違約手付といいます。
売買契約が解除できる場合もある!?
中古マンション購入時の売買契約は、一度契約してしまうと契約の解除は簡単にできません。しかし、「解除しなければならない」というような特別な事情が背景にあれば、解除できる場合もあります。
契約後に解除できるケースを見てみましょう。
- 条件による解除
売買契約の時に、解除できる特約がついている場合には解除ができます。例えば、「住宅ローン特約」です。売り手が購入するつもりがあっても住宅ローンが認められなければ購入することはできませんよね。売買契約後から解除期日までの間に住宅ローンの審査に通らなかった場合には解除ができます。
- クーリングオフによる解除
売り手が不動産会社の場合にのみ、クーリングオフによる契約解除が可能です。クーリングオフによる解除を行うためには次のような条件があります。・宅地または建物の売買契約であること
・不動産会社の事務所以外で行った契約であること
・物件の引き渡しが完了していない、代金の決済が終わっていない
ただ、不動産会社の事務所以外だとしても、買い手が申し出た場合の自宅や勤務先における売買契約は解除ができません。訪問販売のように、買い手の意向ではない場合で不動産会社の事務所以外で行った売買契約が適用となります。
- 手付放棄による解除
売買契約のときに買い手が支払う手付金を放棄することで、解除ができる方法です。売り手側の都合で契約解除する場合は、手付金の2倍の額を買い手に支払う「倍返し」をしなければなりません。ただ、解除するのは履行に着手する前と定められています。履行に着手する前とは、引渡しの前に所有権の移転登記を行った、買い手側が代金の準備をして売り手側に引渡を催告した…などの場合です。
- 危険負担による解除
地震や台風などで取引物件に大きな毀損があったなど、取引ができなくなったときにできる解除方法です。
- 瑕疵担保責任による解除
あまり聞き馴染みのないという方が多いかもしれませんが、瑕疵担保免責(かしたんぽせきにん)はマンション購入の際には覚えておきたい言葉です。これは、売却物件について売り手側が気づかなかった不具合や欠陥について責任を負うというものです。基本的に、売り手は売却不動産について知っていることを伝えてから売却する義務がありますが、気づかないで不具合や欠陥が隠れているケースもあります。その不具合や欠陥があることで、買い手が今後住んでいくことに支障をきたすこともあるでしょう。購入しようとする物件に契約を解除しなければならないほどの重大な欠陥が見つかった場合には、買い手が解除を申し出ることができます。
- 契約違反による解除
売り手または買い手のどちらかが、通常の取引ができないような違反をしたときにできる解除方法です。一般的には、売買代金に応じて違約金を支払うことが売買契約に明記されます。
- 合意による解除
上記以外でも、話し合いにより売り手と買い手の双方が合意した場合には解除することが可能です。
まとめ|売買契約は自己責任! 後悔のない締結をしよう
物件探しから考えると売買契約はマンション購入の最終段階とも言える大切な手続きです。印鑑を押してしまえばマイホームの夢へとあと一歩の状態ですが、契約を結んでしまうと後戻りができません。
当日は慣れない契約で緊張するため、売買契約の流れや解除方法などについては事前にしっかりと把握しておき、疑問点を解消しておく必要があります。
後悔のない売買契約締結のために、重要事項説明および売買契約書は内容をよく読み、曖昧にしたまま印鑑を押すことがないようにしましょう。
2017/03/02時点での情報です。