万が一に備えて!知っておきたいマンション購入と保険
地震大国、日本。2011年の東日本大震災で地盤沈下したり傾いたりして損傷したマンションの映像は、被災地だけでなく全国の人々に衝撃を与えました。「マンションは鉄筋コンクリート造で丈夫だから災害が起きても大丈夫」 と思っていた方も多いのでは。丈夫で近代的なマンションといっても、自然の力の前では無力であることを多くの人が思い知らされたのではないでしょうか。
また、マンションの購入に関わるリスクは災害だけではありません。住宅ローンを借り入れてマンションを購入した場合、自分自身に万が一のことが起き、返済が滞る可能性もあります。そうなると、残された家族に大きな負担がのしかかり、お子さんの 進学や結婚など将来の計画が狂ってしまうことさえ ありえます。
病気や災害はいつおこるか分かりません。万が一のときに備えて、マンション購入を考えるときには、保険についても合わせて検討しておきましょう。今回は、マンション購入に関する保険のうち、団体信用生命保険、火災保険、地震保険を中心にみていきます。
目次
【団体信用生命保険】住宅ローン専用の生命保険
銀行や信用金庫などの金融機関から住宅ローンを借り入れてマンションを購入すると、団体信用生命保険(団信と省略することがあります)という住宅ローン専門の生命保険に加入することになります 。
※フラット35を利用する場合は任意加入となります。
団体信用生命保険 は住宅ローン借入者が保険契約をするのではなく、金融機関と保険会社との間で取り交わす生命保険です。そのため、団体信用生命保険に加入していると、万が一、住宅ローンの借り入れ主が亡くなったり、高度障害となったりしたこ とから住宅ローンの返済ができなくなった場合、生命保険から住宅ローンの残高が保障されます。住宅ローンが払えなくても物件を手放す必要はなく、それどころかローンの完済された物件を家族に残すことができるのです。これならば、住宅ローンを借り入れていても、家族の将来に影響を及ぼすことはありません。
団体信用生命保険の種類と保障
最近は、通常の団体信用生命保険だけでなく、三大疾病保障付保険(がん・脳卒中・急性心筋梗塞をカバー)、七大疾病保障付保険、八大疾病保障付保険(三大疾病のほか、高血圧や糖尿病など特定の疾患をカバー)などの特約つきの保険も増えてきました。
団体信用生命保険の保険料は、一部の金融機関やフラット35を除いて、住宅ローンの金利に含まれているので、別途保険料を払う必要はありません。ただ、三大疾病保障付保険、七大疾病保障付保険、八大疾病保障付保険などの特約をつける場合は、住宅ローン金利に数%程度上乗せしたり、年齢や住宅ローンの残高などによっては別途保険料を払ったりする必要があります。加入時に保障内容と保険料を確認しましょう。
なお、団体信用生命保険に加入する場合も、下記のチェックすべきポイントがあります。まずは、加入者本人の健康状態です。
・3か月以内に医師の治療・投薬を受けたことがあるかどうか
・過去3年以内に病気で手術を受けたことあるいは2週間以上にわたる医師の治療・投薬を受けたことがあるかどうか
医療保険などと同様に、団体信用生命保険にも加入者の健康状態を告知する必要があります。上記に該当したとしても、保険会社が申告内容を総合的に判断して加入の可否を決定しますので、必ずしも加入ができないわけではありません。
また、団体信用生命保険では、がん保険などで補償される先進医療特約などはカバーされません。さらに、補償が受けられるのは「死亡もしくは高度障害を負った場合」なので、けがの程度によっては補償が受けられず、住宅ローンを引き続き支払っていくことになる可能性もあります。こうした際の保障が必要であれば、別途保険への加入を検討してみましょう。
なお、フラット35では、従来の「高度障害保障」から「身体障害保障」へ見直しがされる他、「介護保障」の追加など保障内容が充実した新機構 団体信用生命保険が10月1日からスタートしていますので、加入を検討している方は要チェックです。
団体信用生命保険に代わる保険
団体信用生命保険と比較されるものに、生命保険、収入保障保険があります。それぞれの特徴や、団体信用生命保険との違いを見ていきましょう。
●生命保険
いわゆる通常の生命保険は、保険料を支払っている加入者が入院や手術を受けた場合に給付金が支払われる、死亡時に遺族が死亡保険金を受け取れるといった内容になっています。保険料は、保障内容や年齢、病歴などによってさまざまです。また、掛け捨てでない貯蓄性のある保険の場合、解約すると解約払戻金が受け取れます。
民間の保険の中には保障が充実したものもありますが、そういった商品は一般的に保険料が高額です。また、住宅ローンを借り入れしている加入者が亡くなった、あるいは 高度障害状態になったからといって、住宅ローンが完済されるわけではありません。住宅ローンの総額が保険金や給付金を上回った場合、残された家族が負債を負うことになります。
●収入保障保険
収入保障保険は、加入者が亡くなった時の死亡保険金を一括して受け取るのではなく、月々定額で支払うという生命保険です。若いときに加入すると保険料が安く済むので、死亡保障が目的なら合理的だとされており、近年人気があります。
ただ、上記の生命保険と同様に、加入者が亡くなったもしくは高度障害状態になったからといって、自動的に住宅ローンは完済されません。収入保障保険での受取金を住宅ローン返済に充てるには、相続に関連してさまざまな手続きが必要になることがあり、大切な家族を失って悲しい時期に煩雑な手続きに振り回されることが予想されます。
また、収入保障保険での受取金と住宅ローンの返済額を同額にしてしまっている人は注意が必要です。いざというとき、保険金を一括で受け取ると、月々で受け取った場合よりも受取額が少なくなります。一括で受け取った保険金を一括で繰り上げ返済すれば、ローンの残債額は完済することができますが、引き続き月々の返済を行う場合は、一括で受け取った保険金がローンの残債額を下回ってしまうことになるでしょう。
団体信用生命保険は保険料が安い、もしくは別途支払わなくてもよいので、不動産を生命保険代わりと考えて、既存の生命保険を解約したという人もいるようです。たしかに、生命保険に住宅資金の保障がある場合は、重複になるのでそうした特約を外してもよいでしょう。ただ、団体信用生命保険と生命保険と収入保障保険、どれが一番オトクかは、加入者の年齢などによっても異なります。
団体信用生命保険は加入者の年齢が考慮されません。フラット35などで借り入れて任意加入を考えている場合、一般的な保険は若くて健康であるほど保険料が低く抑えられるので、若い方であれば、団体信用生命保険よりも民間の保険のほうがオトクといえるようです。
【火災保険】火事以外にも様々なリスクを補償
マンションを購入するときに、金融機関や保険会社から火災保険への加入を勧められることが多いでしょう。ただ「マンションに住んでいて、床上浸水とかありえる?」「高層階なら台風の被害も少ないのでは?」と疑問に思う方も多いでしょう。火災保険に加入するにあたっては、戸建てとは異なる、マンションならではの視点があります。
そもそも、火災保険は火災だけを補償するのではありません。火事・爆発のほか、自然災害(台風、風水害、落雷など)、地震、水漏れ、盗難、設備の破損、第三者による騒擾まで、幅広くカバーします。この中には、マンションの居住者でも必要な保障が含まれているのではないでしょうか。
マンションでは専有部分を保険の対象とするのが一般的
マンションならではの視点として、「共用部分」と「専有部分」 に関する保険の考え方があります。専有部分は各戸の住戸部分、共有部分はエレベーターホールやエントランス、廊下など住人が共有する施設・設備のほか、玄関扉やベランダ、サッシや網戸、カベや床、専用庭も共用部分にあたります。 通常、共用 部分は管理組合が火災保険などに加入しているケースがほとんどなので、個人では専有部分に保険をかけることになります。
そもそもマンションに火災保険は必要なの?
マンションの高層階にお住まいなら、もしかしたら床上浸水の心配はないかもしれません。しかし、上記に挙げた火災保険のカバー範囲のうち、水漏れや地震、盗難、設備の破損などの補償は、マンションでも必要ではないでしょうか。とくに、水道の流しっぱなしにより水漏れは、よくあるケースです。最近は、マンション住まいの方に向けて、水災などの必要ない補償は選択しない、水漏れや地震などの補償だけつけるというように、カスタマイズできる火災保険も登場しています。カスタマイズすることで、保険料を低く抑えることが可能です。
【水災保険】火災保険で水災をカバーできる
浸水などの水災に関しては、上述したように火災保険の補償範囲でもカバーできます。
水災補償はマンションの居住環境によって考えよう
水災とは台風や暴風雨などが原因で起きた洪水や高潮、土砂崩れによる被害をいいます。雹や雪による被害は含まれません。また、上層階の住人の過失や、建物内外の給排水設備の破損による水濡れ損害については、水災ではなく、「水漏れ損害」になりますので、補償が異なります。
マンションに水災補償をつけるかどうかは、住んでいるエリアの水害リスクによって判断しましょう。川岸や海辺であれば、マンションであっても付けておいたほうが安心でしょう。 また、昨今は集中豪雨による都市型洪水による下水漏れなどのリスクもあります。
【地震保険】火災保険の特約として加入しよう
東日本大震災後からとくに気になるのが地震保険です。地震保険は、地震による被災者の生活の安定に寄与することを目的 とする保険で、政府と損保会社が共同で運営しています。上述した火災保険では地震が原因で発生した火災や浸水には補償がなされないことに注意が必要です。そうなると、火災保険に加入する場合、地震保険も必要かどうか悩む方も多いでしょう。 マンション居住者が地震保険に加入すべきかどうか、いくつかの角度から考えてみましょう。
地震保険の共用部分と専有部分の扱い
マンションの場合、地震保険は火災保険と同様に、共用部分は管理組合が加入し、個人では専有部分に保険をかけることになります。マンションで注意したいのは、地震で共用部分に損害が出た場合の修繕費用です。損害の程度によっては修繕費用も大きくなり、修繕積立金や共用部分の保険金だけでカバーできなければ、一時金の拠出が必要となることがあるからです。幸いなことにマンションの損害認定は共用部分の損害状況を元に「一棟」で判定されます。つまり、共用部分が「半損」と認定されれば、専有部分には損害がない場合でも同じく「半損」と認定されます。一時金の拠出に不安がある場合は、専有部分に地震保険をかけておけば、その保険金で少しでも負担を軽くすることができるでしょう。ただし「一棟認定」は共用部分に地震保険がかかっていることが前提です。専有部分の地震保険を検討する際は、共用部分の地震保険加入状況を忘れずに確認しましょう 。
被害が出やすい家財を地震保険で補償する
地震保険では、建物の損害だけでなく、家財を補償することも可能です。例えば、震度6の地震が起きた場合。マンション自体が損壊することはなくとも、食器棚が倒れて中の食器が散乱する、テレビが倒れて液晶が割れるなど、家財が被害を受ける可能性は多いにあります。マンション居住者の場合、建物自体の地震保険には加入しなくても、被害を受けやすい家財については、保険に入っておくことをおすすめします。
家財の補償だけでも受けられれば、地震が起きて当座の生活再建資金が必要になった場合の手助けにもなるからです。とくに、マンションを購入したばかりで貯蓄が少ない、住宅ローンの残債が多いというケースでは、まとまったお金が手元に入ることのありがたみが増すはずです。こうした場合は、家財の地震保険への加入を検討してみましょう。
まとめ
健康で平穏無事な生活を送っているあいだは、保険のありがたみはわからないものです。とくにマンションの購入でまとまったお金が出ていくときや、子どもの成長やライフイベントでお金がかかるときは、節約のために保険の見直しや解約をしたくなるかもしれません。
しかし、病気や事故、けがや自然災害などは、いつ起こるか予測できません。保険は、いざというときのライフラインです。万が一のときに後悔しないためにも、ライフスタイルに合わせた保険の見直しや加入を検討しておきましょう。
2017/10/16時点での情報です。