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2015.12.25

G architects studio×INITIA
ワークとライフの新しい関係を受けとめる住まいのカタチとは?

建物内観写真(2015年12月撮影)

近年通信技術の進化に加え、ワークスタイルやライフスタイルの変化により、“住まいで働く”ということが、決して珍しくなくなってきています。
こうした現状を踏まえ、「南平台セントラルハイツ」のリノベーションを考案。
今回は、その設計においてコラボレートした田中亮平さんと松浦荘太さんをお迎えし、ワークとライフが共存する住まいのカタチについて、コスモスイニシアの春田亮一が対談いたしました。

  • おかげさまで「南平台セントラルハイツ」は成約致しました。

立地と広さを鑑みてオフィス機能を付加

春田

リノベーションマンションは、見た目麗しく再生するだけではなく、その立地や物件の特徴を踏まえた付加価値を加えていくことが大切です。「南平台セントラルハイツ」は、渋谷駅から徒歩10分というアクセスの良さと130㎡を超える広さから、当初より住居専用という発想はなく、いかにオフィス空間を取りこんでいくかが鍵になると考えました。通常は私自身が設計も担当しているのですが、今回はよりダイナミックな発想が必要だと感じて、田中さんにお声がけをしたのです。

田中

少し畑は違いますが、春田さんとは同世代の設計者同士だったこともあり、定期的に私の仕事を見てもらっていて、今回初めて仕事をご一緒させていただくことになりました。お付き合いが長く親しいゆえに、決して甘んじてはいけないという緊張感のもと、良きコラボレートができたと考えています。この物件を初めて訪れた際驚いたのが、その間口の広さ。そして南側に広がる景色もまた印象的でした。それもそのはず、そもそも2住戸分の間取りを1住戸にした住まいだと聞いて納得。しかし、元の間取りのように細かく分割して、職と住の空間を分離させるのには違和感がありました。それでは別々に部屋をとりこんでいるのと同じですから。南側の景色を上手に取り込んで魅力あふれる空間に仕立てることで、それぞれの部屋の繋がりを強めたいという気持ちになりましたね。

株式会社コスモスイニシア
流通事業部・リニューアルマンション部 二課
春田 亮一 RYOICHI HARUTA
中古マンションの再生販売を担当。一級建築士。

松浦

これまで個人住宅のリノベーション案件に数多く関わってきた経験から、田中さんにお誘いいただきこのプロジェクトに参加いたしました。物件の初見で感じたことは、やっぱり田中さんと同じく、大変広い物件であるということ。ただそれは決して広々としているという意味ではなく、数字上広いという意味。部屋数は多いものの細かく仕切られすぎていて、広さが感じられずもったいないなあというのが正直なところでした。そこで一転、広い空間や細長い空間などを大胆に組み合わせることで、ワーク、ライフともにパフォーマンスがアップするようなリノベーションを目指したのです。

松浦荘太建築設計事務所代表
松浦 荘太 SOTA MATSUURA
中古住宅のリノベーションを数多く手がけた経験を持つことから、今回のプロジェクトに参加。

仕事空間と住居空間をあえてボーダーレスに

渋谷駅から徒歩10分であることを忘れてしまいそうなバルコニーから広がる景色。

田中

今はフリーランスや起業家の方だけでなく、「テレワーク」「在宅勤務」という言葉が一般化しているように、会社勤めをしている方でも自宅で仕事をするシーンが増えてきていますよね。家庭にオフィスの機能を持たせることは、まさに時代のニーズだと言えるでしょう。以前は「家庭に仕事を持ち込むな」という発想が主流でしたが、現在は家庭に仕事を持ち込むことで、むしろ生活が豊かになるという考えに変容しつつあります。例えば、自宅でメールチェックをするといった、ちょっとした作業をこなすことで、早く帰宅できたり、長期休暇の取得が容易になる。ただ持ち込み方には工夫が必要で、そこがこのプロジェクトの核ともいうべき部分でしたね。

春田

そう、作業場を孤立させずにむしろ暮らしの空間に融合させる。ずばり、仕事が暮らしの中に入ることを恐れないことが大切だという結論が、このプロジェクトで導かれたと思っています。いかにもオフィスという面構えをした空間だと、家に帰っても労働を強いられている感があってリラックスできないし、何より仕事をしない時はその空間は完全なデッドスペースと化してしまいます。実にもったいないお話ですよね。例えば昼間はワーキングスペースだけど、夜にはライフスペースになる。そんな中間領域的空間をこの物件で具現化させたかったのです。

松浦

ワークとライフをいかに融合するか考案しているうちに浮かんできたのは、伝統的な日本家屋にあった「土間」でした。仕事で来客があれば、ちょっとした商談などは土間でこなしていましたし、そうでない時間は子どもたちが遊んだり、家事の作業場になったり……。用途を限定せず多機能に活用できる空間は、大変効率的。実はお店をはじめとして、日本では昔の方が自宅で働くシーンが多かったのではないでしょうか?働く空間の奥や2階で暮らしを営む中で、土間は貴重な役割を果たしていたと思い当たったのと同時に、職住共存空間の間取りの先例としても参考にできると閃いたのです。

G architects studio代表
田中 亮平 RYOHEI TANAKA
隈研吾建築都市設計事務所に在籍後に独立。ホテルなど大型商業施設の設計に携わってきた。

建物内観写真(2015年12月撮影)

目的を限定しない、それぞれの空間

松浦

まさに土間のイメージを表現したのが、フリースペースです。玄関扉を開くとゲストを通すことができる、ゆったりとした広さ。簡単な打ち合わせならここで済ませることができます。Room3は事務所として使用している場合は、コネクションして開放。本を読んだり音楽を聴いたりなど書斎のように活用したい場合は、間仕切りを閉めることでプライベートを確保できるという仕組みです。

田中

設えという点では大きくふたつ。実はフリースペースからRoom3へと続く壁面は、マンションの構造上撤去することができません。ならばそこを逆手に取って、 一面を大きな棚に仕立てました。天板の移動は調整できるので、大小を問わず様々なものが収納できます。書類や資料などの整理に活用するのはもちろん、趣味の本やグッズなどもディスプレイすることができ、中間領域的な雰囲気を醸し出すことができるでしょう。もうひとつはこのひと続きの空間の床に施した60cm四方の商業用大判タイル。小さな家庭サイズを用いないことで、自宅にいながらワー クへの心理的切り替えをアシストする役目を果たせると考えています。

春田

あとはどう利用していただくか。それぞれの空間に目的を限定しないことが重要だと考えます。例えば書きものや簡単な調べものなどは、リビングのコーナーにデスクを置けば、家族の笑顔を眺めながらこなすことができますし、Utilityに私物をすべて片付けてしまえば、仕事関係のちょっとした接待パーティーの開催も可能―ちょっと考えるだけでも、アイデアが出てきます。私たちの発想に留まらず、入居される方がより柔軟に使ってくださることが理想です。

建物内観写真(2015年12月撮影)

建物内観写真(2015年12月撮影)

メゾン南青山においてもエントランス空間を重視 ※おかげさまで「メゾン南青山」は成約致しました。

春田

南平台セントラルハイツと並行し、同じコンセプトで動いていたのが「メゾン南青山」。こちらも玄関スペースを工夫しました。来客を迎えるに十分なエントランスギャラリーは、ワークスペースとしても十分な広さを確保していますし、その奥に続くRoom1、Room2ともに動線的に事務所としても利用が可能です。

松浦

エントランスギャラリーのシャープな印象を与える間仕切りは、二枚連動の引き込みタイプを採用し、ひとたび開放すると、南面に広がる青山の市街を望める広いバルコニーまで通じます。オープンエアの接待スペースとして活用すれば、会話も弾みそうです。

田中

「メゾン南青山」の特徴は、エントランスギャラリーやふたつの部屋、さらにはバルコニーまで含めて、段階的にワークとライフのバランスを調整できることではないでしょうか。入居された方のお仕事やライフスタイルの変化にもアジャストしやすい仕様に出来上がっていると思います。

春田

ワークとライフの新しい関係の構築に、私たちなりの答えを取り入れた2つのプロジェクト。どちらも2015年末には完成の予定です。是非期待して完成した姿を見に来ていただきたいですね。