快適のNext2023.03.16
自然が持つエネルギーを利用するパッシブデザインを採用した
新築分譲一戸建『イニシアフォーラム尾山台』
風、光、緑の恩恵を活かした住まいづくりを紹介します
国分寺崖線が育む豊かな緑。多摩川の悠久の流れ。風と光が集まる高台の地。
尾山台1丁目に建設された一戸建住宅『イニシアフォーラム尾山台』(全18戸・2022年竣工・販売済)は、その土地が育む自然の心地よさを住まいに取り入れるよう、パッシブデザイン※1を採用しました。
パッシブデザインの住まいづくりについて、関係者のインタビューを通じてご紹介します。
『イニシアフォーラム尾山台』の立地
『イニシアフォーラム尾山台』は、東急大井町線「尾山台」駅まで徒歩12分~14分、「九品仏」駅まで徒歩11分~12分の立地。情緒溢れる商店街や等々力渓谷公園などの豊かな自然に恵まれた高台の世田谷区尾山台一丁目に誕生しました。 駅から緩やかなアプローチながら国分寺崖線上の高台に位置する本物件の周辺は、静謐な邸宅が立ち並び、洗練された街並みの中で青空と緑豊かな風景と開放感を味わうことができます。18区画すべての敷地において110㎡超のゆとりある広さを確保し、風や光の導線を効果的に住戸に採りこめるパッシブデザインを配棟や外構デザイン、植栽配置に採用することで、自然と共存する成熟した街並みを創出しました。
尾山台の土地が本来持っている力を活かしたパッシブデザイン
豊かな自然環境と景観美を維持する多摩川風致地区と国分寺崖線上の高低差がある高台の敷地という、本土地ならではの自然環境を最大限に活用できる設計手法としてパッシブデザインを採用しました。
そのために、国分寺崖線と多摩川に沿った周囲数キロメートルにおよぶ立地特性を詳細に考察。特に高低差のある土地の風の流れに着目し、心地よい自然の力を敷地と住まいに引き込むことにこだわりました。
INTERVIEW
機械的な心地よさではなく、
地域の自然環境の特性を活かすことで、良好な住環境を実現したい。
初めて計画地を訪れた時に、この立地を活かすために何をするべきかを考えました。閑静でゆとりがあり緑量が豊かな風致地区。国分寺崖線上の高低差がある高台の敷地。ここで邸宅としてのゆとりや心地よさと時代に求められる環境共生を実現するためには、ゼロから新しいものを作るのではなく、この恵まれた環境を最大限に活用することが大切だと感じたため、“尾山台にふさわしいパッシブデザイン”を求めました。既存の環境を尊重し、活かすことは、歴史のある尾山台の街そのものを尊重することにもつながるはずです。またそれは、デベロッパーとしての責務とも言えます。
「イニシアフォーラム尾山台」がこの街の良好な環境を享受するだけではなく、地域の方々に大切にされてきた環境と風景を、より良い形で維持していく。こうした想いも、“尾山台にふさわしいパッシブデザイン”に通じています。
株式会社コスモスイニシア 建築本部
細谷 一郎
敷地に迎え入れる
太古の昔、多摩川の流れが武蔵野台地を侵食することで形成された国分寺崖線。ここに吹き渡る四季それぞれの風の流れを解析することで、この土地ならではの環境の特徴を理解し、「イニシアフォーラム尾山台」のランドデザインに反映する。
一つひとつの住まいへ導く
季節によって異なる風の流れを、敷地内に導く。さらに、敷地のすみずみに行き渡らせるために、風の通り道や配棟を工夫する。また、その過程で植栽による蒸散効果等を利用し、より心地よい風を邸宅に届ける。
自然の力で四季を快適に暮らす
心地よい風を取り込むために、住まいの向きや窓の位置、形状、大きさにきめ細かく配慮する。さらに、住まいの内側にも風の通り道をデザインし、1階から2階まで、立体的な心地よさを追求する。
1地域の風の流れを読み、
敷地に迎え入れる
多摩川にほど近い高低差のある立地。
ここに吹き渡る、四季の風を導く。
風は、その土地の微気候に大きな影響を与えます。
「イニシアフォーラム尾山台」では、計画地を中心に、周辺地域を含む約10年間の風に関するデータを解析し、この地域における季節ごとの風の傾向や特徴を把握しました。
この情報を敷地内のレイアウトにフィードバックし、流れ込んだ風が巡り行く道筋や風量、風圧を繰り返しシミュレーションすることで、それぞれの邸宅に心地よい風を効果的に取り込める配棟計画と街区がデザインされました。
このシミュレーションは、地上レベルだけではなく、2階レベルでも実施し、街区全体の立体的な快適さを追求しました。
これらの風に関する専門的な解析やシミュレーションには、YKK AP株式会社が風によるエキスパートとしての知見とノウハウを結集しています。
INTERVIEW
10年間の風のデータを読み解き、独自のノウハウで見えてきた風の姿が、
住まいの在り方を教えてくれます。
「イニシアフォーラム尾山台」では、過去の風向・風速データを分析した結果、5月から8月の夏場は、多摩川方向から南南西の風が吹く頻度が高いことが確認できました。風速は2m/秒弱です。また、9月から10月の秋は北東の風に変わり、風速も1.2m/秒と夏に比べて弱い風が吹くことがわかりました。そこで、計画地の周囲数百メートルのかなり大きな範囲で、風の流れに影響を与えると考えられる住戸・建物を立体モデル化し、風の流れをシミュレーションしました。その結果、例えばある住戸では、1階は緩やかな風が入り、2階は部屋の奥にも届く程度の風が吹き込むことが分かりました。部屋全体に風の流れが生まれる2階にリビングを配置し、緩やかな風の1階を寝室にするということは理にかなっていることも確認できるのです。また、壁にどれだけの風圧がかかってるのかもわかるため、ここに窓があると室内に風の通り道ができそうだ、ということも提案できるようになります。
私たちは風のシミュレーションを十数年前から始め、これまでにさまざまな風環境の解析に携わってきました。そこから得られた「風のエキスパート」としての経験とスキルやノウハウが「イニシアフォーラム尾山台」にも息づいているのです。
風の流れの分析と
敷地内の通風シミュレーション
[南南西の風 19m/s]
[北東の風 12m/s]
2敷地内の風の流れをデザインし、
一つひとつの住まいへ導く
迎え入れた風を心地よく変化させながら、
街のすみずみまで行き渡らせるランドスケープデザイン。
「イニシアフォーラム尾山台」のランドスケープデザインは、地域の風に関する詳細なシミュレーション結果を反映し、迎え入れた風を敷地のすみずみまで行き渡らせるために最適なレイアウトを模索しました。
街区中央部に多摩川から吹き渡る南南西の風を取り込む開発道路を配置。
これが風の流れの動脈の役割を担い、さらに住戸間の空間や植栽スペースを通って広がり、それぞれの住まいに導かれます。
夏には敷地の要所に設置された緑の蒸散効果で、周辺の温度上昇を抑える効果も狙いました。
また、風致地区としての景観の調和のために、デザインにもきめ細かく配慮しています。
ランドスケープデザインは、長崎オランダ村(旧ポートホールン長崎)・ハウステンボスを手掛けた森山大樹が、尾山台の土地の力を引き出します。
INTERVIEW
毛細血管のように風が住宅の間を流れる。
風致の良さを引き出しながら個々が快適になるデザインを。
ここは南から北にかけて標高が上がる南斜面の土地なので、ちょうど多摩川を渡ってくる夏の季節風をひろう形になっています。また、風致地区のため離隔距離があり、風環境に有利なゆとりのある区割りができるため、パッシブデザインという考え方を効果的に取り入れることができます。まず、アプローチや開発道路を南北に配し、風を取り入れる動脈にします。そこからさらに毛細血管のように住宅の間に空気を流し、それを木々の蒸散効果でクールダウンさせて、今度は住宅の窓から入れて、北に抜けるようにします。これを大きな流れとしてデザインしました。流入した風が集中する場所に、植栽を集めたクーリングスポットを設置。街区の中央には街のアイデンティティとして共有の景観となるクーリングプラザという小さな木立をつくりました。
開発道路には透水性のインターロッキングを採用し、地中での保水で温度上昇の抑制を狙っています。また、南西側の敷地境界には緑生ブロックを採用しました。夏の風に対して蒸散効果が期待できる場所でもあり、景観的にもすぐれています。本来この周辺は国分寺崖線沿いの景勝地。富士山が見える号棟もあります。風致地区としての街の美観にも貢献することでしょう。蒸散量の多い広葉樹で夏を冷やし、日差しを遮る。冬は落葉して日光を取り入れます。そのような植栽が借景となったり遮蔽したりして、生活の中の景観コントロールも兼ねています。全18区画という規模だからこそ、こうした機能と景観の両方の効果を狙ったデザインを可能にしているのです。
有限会社ノマドクラフト
代表 森山 大樹
新設道路には透水性の高いインターロッキングを敷設。街のアイデンティティを表現するとともに、中心部での蒸散効果により街の温度コントロールにも寄与します。
風のシミュレーションで通風場所が重なる場所に植栽を配し、蒸散効果を狙いました。高木は共通の借景としての役割も担います。
南西側の敷地境界擁壁に、緑生ブロックを採用。植栽による蒸散効果に貢献しながら、尾山台の街と調和する美観を形成します。
開発道路の路面に、透水性のインターロッキングを採用。浸透した雨水を地中に保持することで、路面の温度上昇の低減を狙います。太陽の熱を蓄積しにくい白色系を採用しました。
駐車場デザインに細骨材を使用。日光の照り返しや温度上昇を抑える効果が期待されます。
コンクリート舗装にスリットをつくり、緑化や石を入れることで、目地をデザインするとともに、水をできるだけ地面に戻すようにしています。
3住まいの中へ風の道を通し、
自然の力で四季を快適に暮らす
自然から生まれた風の流れを
リビングにまでつなげる、そんな住まいを目指して。
敷地に取り込んだ風をそれぞれの邸宅の内側へ導き、快適な暮らしを実感していただくことこそ、「イニシアフォーラム尾山台」のパッシブデザインの最大の狙いです。
まず風を効果的に取り込むために重要な窓に着目し、屋内の風の流れをシミュレーションしながら、位置、形状、開きの方向等を一つひとつ検証し最適化しました。
さらに、取り込んだ風が廊下や居室をどのように巡り、どこから抜けるのかもシミュレーションで確認しています。
また、天窓を設けて立体的な風の流れをつくり、2階リビングの快適さにもきめ細かくこだわりました。
屋内の風の流れのシミュレーションや窓の最適化には、YKK AP株式会社の独自の知見とノウハウが込められています。
INTERVIEW
最適な場所に、最適な窓を設置して、
捉えた風の流れを屋内にくまなく巡らせる。
私たちは、建物の設計において、通風という観点から窓がどうあるべきかをつねに考えています。基本的な手法として、季節風の風上に窓を開けます。そして、風下の方にも窓を設置していただきます。
今回は、風をより効果的にキャッチできるように、当初の設計では引違い窓だったところに、たてすべり出し窓の複数設置をご提案しました。引違い窓でも風が室内側に入ってくるのですが、これをたてすべり出し窓に変え、風が来る方向に開くように設置すると、そこに風がぶつかって室内に入ってきます。その風が居室を1周してもう一つの窓からスーッと抜けていくのです。その効果はシミュレーションでも明らかですが、通風量を大幅に増加させ、換気時間を短縮することもできます。
次に、1階の風を2階へ押し上げる流れができないかと考えました。これについては天窓の設置につながりました。この地域では2階の高さにも風がよく通ります。この風の力が、1階から風を引き上げてくれます。結果的に1階の風通しも向上することになり、非常に良い風環境の構築につながりました。さらに今回は玄関に通風ドアが採り入れられため、2階へより多くの風を送り込むことができるでしょう。
「新型コロナウィルス対策として換気が注目され、通風ドアに関する問い合わせも増えています。「イニシアフォーラム尾山台」における室内の通風環境の最適化は、そのような時代の要請にもマッチしているのではないでしょうか。
たてすべり出し窓による
風の取り込み効果
開口の大きい引違い窓は、正面の風は室内へ取り入れるが、窓と並行する風は取り入れにくい。
たてすべり出し窓は、横風が窓の張り出しに当たり、正面以外の風も室内へ取り入れることができる。
住戸内の通風シミュレーション
1階と2階を結ぶ階段の天井に換気用の天窓を設置。部屋で温められた空気が上昇・排出されると、1階から新たな空気が取り入れられ、自然の対流を生み出します。
玄関の扉を閉めたまま、自然の風を取り込むことが可能。通風を高めるとともに、セキュリティ面でも安心です。
各居室には、ガラスに金属膜をコーティングすることで一年を通して冷暖房効果を高める「Low-E複層ガラス」を採用し、快適な室内環境となるようにしました。
計画地の環境特性を理解し、⾵の通り道などにも配慮した配棟計画に。住まいにおいても機械的な⼼地よさだけではなく、光・⾵・緑の恩恵を活かした空間づくりを⾏っています。