不動産投資を行う際に、最も重要なポイントは、その立地条件であることは間違いのないことです。当然、立地条件の良い場所は価格が高くなります。
その価格の目安として、国土交通省などが基準値としての土地の価格を公表していますが、そのうちのひとつに、「路線価」があります。
路線価とは?
路線価とは、国税庁が発表する「道路(路線)に面する宅地1平方メートルあたりの土地の評価額」です。「道路(路線)」とは、誰もが通行できる公道のことで、個人の敷地内にある、いわゆる私道は含まれません。
評価する宅地の面する路線の路線価を基として計算され(詳細な計算方法は国税庁のホームページをご覧ください)、土地の相続時の評価としています。
また、路線価は相続税や贈与税の算出基準になるほか、金融機関が担保評価をおこなう際の参考価格として用いられる場合もあります。
路線価には2種類ある
正確に言えば、路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価(固定資産税評価額)」の2種類があります。一般的には、路線価といえば、「相続税路線価」を指すことが多いようです。
※公示価格とは、国が毎年評価している全国約2万6000地点の土地の単価で、土地売買取引や公共事業の土地収用時などの際の指標になる
2021年の路線価はどうなったか?
例年同様、2021年7月1日に、国税庁より「相続税路線価」が発表されました。結果を見ると、全国平均は前年を0.5%下回り、6年ぶりに下落という結果になりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、自粛生活が一般化し、営業の自粛などもあった商業施設を中心に地価が下落したと言えそうです。
前年より下落した都道府県は39にものぼり、東京、大阪、愛知といった大都市も含まれています。なかでも奈良市、大阪市、神戸市といった観光地(特にこれまでインバウンド需要によって活性化していた都市)の下落が目立っています。そのほかの都市でも、やはり観光客の減少による路線価の下落が見受けられます。
しかしながら、札幌、仙台といった中核都市を抱えた、北海道や宮城などの6道県は、わずかながらも上昇したようです。
この発表された路線価が、2021年1月1日以降に発生した相続において、相続税額に影響する重要な指標となります。たとえば、親から不動産を相続すると、その際に相続税が発生するわけですが、相続税を計算するにあたってその時点での不動産価格が必要となります。その価格が相続税路線価です。
一方、「固定資産税路線価(固定資産税評価額)」は不動産投資などで所有している物件の固定資産税を計算するために使用され、3年に1回のペースで各市町村によって発表されます。
固定資産税評価額は、平成6年度より「宅地の評価については地価公示価格等の7割を目途に評価を行うこと(いわゆる「7割評価」)」とされていますが、この「7割」となっている理由としては、「市町村間、地域間にばらつきがあり、評価額の適正化と双方の均衡化を図る」「地価公示価格の一定割合を目標に、固定資産税評価の均衡化・適正化を推進する」ためだとされています。
路線価の調べ方について
路線価は、国税庁のホームページから調べることができます。利用の仕方から、実際の路線価まで詳しく掲載されていますので、不動産投資の際の路線価の調査や相続時の価格を調べる際に、活用してください。
出典:国税庁「路線価図の説明」
路線価の活用の仕方
では、実際に路線価をどのように活用すればいいのでしょうか。ひとつは、投資しようと考える物件が適正価格であるかどうかの判断基準になることです。そしてもうひとつは、これまでの路線価の推移を見ることで、将来の予測を立てることができるということが挙げられるでしょう。
活用の仕方①路線価から物件の適正価格を知る
正確な路線価が分かれば、物件の適正価格をある程度把握することができます。また、投資による想定利回りもある程度正確に導き出せるでしょう。その数字が不動産会社から提示されている数値と変わらなければ、その不動産会社の誠実さも判断できるかもしれません。
路線価が高いということは、国から資産価値が高いとお墨付きをもらったようなものです。不動産投資対象として見た場合、路線価の高い地域のほうが、将来的にも有利に運ぶことができるでしょうし、金融機関からの融資も受けやすいという側面もあるでしょう。
ただし、路線価が高いというだけで、不動産投資が成功するということではありません。あくまでひとつの目安であることを忘れずに、総合的な判断をするようにしてください。
活用の仕方②路線価の変化から将来を予測する
過去の数値も含めて比較をすることで、土地の価格がどのように変動してきたのか把握することができます。環境や社会情勢の変化によって、その土地の需要が高まったり、低くなったりしますので、それによって価格は変動します。
この変化の推移を把握すれば、これからの予測も立てやすく、資産価値の高い土地に投資することにもつながります。
路線価だけには頼らない
不動産投資において、路線価は参考になる数値ですが、路線価だけに頼らないことも大切なポイントです。残念ながら、路線価には、周辺環境などの条件は加味されていません。あくまで、ある道路に面した土地の価格ということであり、それぞれの土地の持つ条件は考慮されていません。ですから、「同じ路線価」「同じ面積」「同じ道路の幅・奥行」の土地があった場合、路線価額を算出すると同額になります。
不動産売買の実態は、実にさまざまな条件が加味されたうえで、取引が決定します。路線価をそのまま売買の価格と捉えてしまうと、大きなリスクを抱えることにもなりかねません。
不動産の売買を行う場合は、路線価から、ある程度の幅を予測したうえで、詳しい個別の評価をするようにするのが良いでしょう。
構成:猪口真(株式会社パトス 代表取締役)
編集者 ビジネス書籍の編集・執筆、ビジネス雑誌・Webメディアへの寄稿、取材・調査による分析レポート、教育コンテンツ開発、映像制作ほか、マーケティング・コンサルティングまで行う。