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税務

相続対策のための資産管理法人⑥ ~法人疎開の活用例(後編)~

前回は法人疎開の活用例として基本的なケースを解説しましたが、最終回の今回は応用的なケースを解説します。

1、法人のキャッシュで相続税を払うスキーム
~税負担の緩和と資金繰りの安定策としても~

社歴の長い法人の中には借入依存度が低くキャッシュが潤沢で、内部留保の蓄積により株価が高額なケースも見受けられます。このような法人の株主である個人に相続が発生すると、株式評価額に対する相続税負担も大きいことから、金庫株(株式の発行会社が自己株式を買い戻して保有すること)による相続税の納税といった方法も検討できます。
相続又は遺贈により財産を取得して相続税を課税された人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税の対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合においては、自己株式の譲渡でもみなし配当課税は適用されずに、譲渡対価の全額が株式の譲渡所得の収入金額とされ、譲渡所得課税されます。みなし配当課税だと最高税率で所得税・住民税合わせて43%強の課税がされますが、譲渡所得課税になると、税率が所得税・住民税・復興税合わせて20.315%に抑えられます。
更に譲渡所得課税の場合、所得金額の計算上、相続税額を取得費に加算する特例の適用が可能となります。非上場株式を相続又は遺贈により取得したときに課された相続税額のうち、その株式の相続税評価額に対応する部分の金額を取得費に加算して収入金額から控除することができます。相続人は相続税の納税資金の調達と所得税の負担を抑える事が可能となります。
法人のキャッシュが薄くて、株式買取り資金の融資を検討する場合でも、金融機関として新たな融資機会として興味を示す事も考えられるため、相談してみる価値が有りますし、法人は資金繰りの安定化と借入利息の損金算入といった効果も考えられます。

2、株式の集約化資金
~事業承継の観点からも~

インフレ経済下の相続対策は「含み益に対する課税回避」として、贈与や譲渡により親族に株式を分散させる対策が行われていましたが、デフレ経済下の昨今は株式の集約化が課題であり、敵対株主の発生防止、意思決定機能の安定化、配当財源の節約など、事業承継の観点からもその効果が期待できます。
※参考 「相続人等に対する売渡請求」条項
譲渡制限株式でも、相続や合併等の一般承継の場合は株式の移転を制限できないが、定款の見直しにより、「相続人等に対する売渡請求」条項を盛り込む事で、法人は一方的な売渡請求で株式を取得する事ができる。請求期限は相続等の一般承継(被相続人の死亡の事実を知った日)があった事を知った日から1年以内に限られる。

3、組織再編を活用した法人疎開
~雇用の維持と生活資金の確保としても~
(1)人的分割(分割型分割)

複数の事業を営む法人の場合に、親族内承継では親族ごとに事業を分割することで、相続対策=争族対策や事業承継対策に活用する事も可能です。親族外承継では事業部門と不動産部門を別会社にし、事業法人を従業員などの第三者に承継して雇用を維持し、不動産法人は親族に承継させて、親族の安定収入を確保する道筋を作っておく事も可能です。

(2)物的分割(分社型分割)

事業部門を子会社化して経営を従業員等に委任し、親会社の役員には親族を就任させます。
親会社は事業用の不動産や設備等を保有し、子会社に使用させて賃料収入を得る形態にする事で持株会社となります。
親族に後継者がいない場合や能力的に困難である場合には、廃業という選択も有り得ますが、雇用の維持と親族の生活資金の確保の観点からも検討の余地があります。
相続税を心配する方の税務相談で法人の申告書を拝見すると、父親あるいは母親が大株主のままとか、全株式を保有しているといったケースを見かけますが、節税のために法人化をしたにも係わらず、賃貸経営の形が複雑になっただけであまり対策になっていない事に気付いていない方が多い印象を受けます。
法人疎開は推定相続人を株主にするのがポイントで、不動産の現物の所有権移転では流通税等の負担が生じますが、資産管理法人の株式を贈与等して支配権を移転させても、流通税等の負担は不要です。他にも様々な対策を図る余地がありますから、現状把握も兼ねて専門家に相談してみる事をお勧め致します。

 

公認会計士・税理士 益本正藏氏
税理士法人総和 代表社員。 1990年、慶應義塾大学商学部を卒業。1991年、大手監査法人に入所。1997年、公認会計士・税理士事務所に入所。2000年、益本公認会計士・税理士事務所開設。2013年、税理士法人総和、益本公認会計士事務所開設。数多の知識と経験を活かし、不動産にかかわる税務相談・セミナーを行っている。その他出版多数。

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