不動産を有効活用し、事業承継を行おう!


事業承継する際に不動産を活用することが有効だということはご存知ですか?
不動産を有効活用することで相続税を抑えることができるのです。
どういった仕組みで抑えることができるのか、また親族に事業承継する際の注意点も合わせて記載していきます。


不動産を活用して事業承継する方法とは?

個人事業主や法人経営者の方は、事業の引き継ぎや亡くなったときのことを考えて、終活や財産の相続について早めの準備が大切です。そもそも事業承継とは、経営権・人材やノウハウ・技術力などの知的財産と、株式などの資産を後継者に引き継ぐことを指します。事業承継で特に問題となるのが「資産」の引き継ぎです。

事業承継は、事業主・経営者が存命していることで、希望の後継者の選定や事業方針の決定が可能であり、また税金を低く抑える策を講じることができます。しかし事業承継は簡単なものではありません。準備が不十分なままに個人事業主・法人経営者が亡くなると、事業の方向性が変わったり後継者や相続人同士でトラブルになったりする可能性があります。

スムーズな事業承継のため、個人事業の場合・法人の場合それぞれの適切な事業承継の方法についてご紹介します。


個人事業での事業承継

個人事業において相続される「資産」は、事業主のプライベート預貯金や不動産、負債などのマイナス財産です。資産にかかる相続税は、基礎控除額と法定相続人の数などによって、課税されるか否かが決定されます。

相続税の計算式は「 ( 被相続人の全財産額 - 基礎控除額 ) × 相続税率 」です。基礎控除額や相続税率は、法定相続人の人数によって変わるため、法定相続人に誰が該当するのかをあらかじめ確認しておかなければなりません。

個人事業主の財産は、国税庁が公示する「財産評価基本通達」によって評価基準が定められています。個人事業主が亡くなる前に事業承継する際は贈与税がかかり、個人事業主が亡くなった時点で事業承継する際は相続税がかかります。どちらも「財産評価基本通達」を基準に算出されます。

賃貸経営が行われている不動産は、自己使用している不動産と比べて、建物・土地のどちらも評価額が下がります。また預貯金や有価証券等の金融資産を相続するよりも、賃貸経営が行われている不動産で相続する方が20~30%程度相続税が減額になるのが一般的です。さらに、建物は「借地権割合」の控除があるため評価額が30%、土地は「貸家建付地」となり評価額が約20%、それぞれ減額になります。

以上のことから、個人事業主の事業承継では、財産を不動産に変えて引き渡すことで、相続税・贈与税の減額が期待できるのです。


法人での事業承継

法人の事業承継は、法人経営者が持っている株式を後継者となる人物に引き渡すことで完了します。法人化されている企業の資産の所有者は法人であり、経営者から後継者に直接相続されるものではありません。そのため、どのように株式を相続するのかがポイントです。

株式の相続も「財産評価基本通達」の基準によって評価されます。株式の評価には法人が所有している財産の評価が反映されます。そのため、法人所有の財産評価額を下げる施策として、会社が不動産を所有する方法が考えられます。さらに、その物件で賃貸経営を行えば、より評価額を下げることができます。


小規模宅地等の特例について

不動産を活用した相続対策では「小規模宅地等の特例」の適用を受けることも可能です。小規模宅地等の特例とは、一定条件をクリアした土地であれば、限度面積までは相続税評価額の減額が受けられる制度です。土地の使い方や運営者によって限度面積・減額率は異なります。


利用状況
土地の種類
限度面積
減額率
賃貸事業として使っていた土地
貸付事業用宅地等
200㎡
50%
賃貸事業以外の事業で使っていた土地
特定事業用宅地等
400㎡
80%
個人事業主の住居用に使っていた土地
特定居住用宅地等
330㎡
80%


親族に事業承継を行う際に気をつけなくてはいけないこと

親族に事業承継を行うことは、個人事業主・法人経営者に関わらずよくあることです。これは「親族内承継」と呼ばれ、メジャーな方法ですがリスクが高いという側面があります。

親族内承継は「家族内で事業を引き継ぐのだから簡単なのでは?」と考えている方が多く、準備が不十分なことも珍しくありません。家族内での事業承継だからこそ、大きなトラブルに発展しがちです。

加えて、「親族内承継には時間がかかる」ということも把握しておかなければなりません。一説には10年以上準備期間が必要と言われるほどです。経営者としての感覚・人望はいずれも一朝一夕で形成されるものではなく、長い時間をかけて資質を育てていかなければなりません。早くから事業承継に向けて準備を進められるという点においては、親族だからこそ可能な部分であり、有効に活用したいものです。


以上をふまえて、親族に事業承継を行う際に気を付けておきたいポイントと、その対処法をご紹介します。


公平性の担保

親族内承継の際にトラブルになることが多いのは、家族内の「公平性の担保」が難しいからです。事業承継では、実質的な経営権を渡すだけでなく、株式などの資産を1人に集中させて相続する必要があります。しかし、他に兄弟等の親族がいる場合、1人に資産が集中すれば他の人が不公平に感じることは自然でしょう。場合によっては代償金を求められ、その後の事業経営に悪影響が出かねません。

この時に注意すべきことは、法定相続人が最低限認められる遺産相続分(=遺留分)を侵害しないように遺産分割することです。遺留分を侵害された法定相続人は、資産が集中した後継人に対して遺留分減殺請求が可能です。遺留分減殺請求をされると、結局遺留分を他の法定相続人に返還しなければなりません。返還する資産や請求額・返還方法などがもめた末、会社経営において重要な株や事業資産を後継人以外の人が取得すると、その後スムーズな会社経営を行えません。

親族内でトラブルが起きないよう、法的な遺留分に留意して公平性を担保しましょう。


後継者への意識づけ

後継者に指名した人物の他に経営に興味を持っている人がいれば、経営者争いに発展する可能性があります。

複数の相続人がいて親族内承継を検討している場合は、時間をかけて社内外に根回しする必要があります。経営者として認められるには、実力はもちろん、社内外の人からの支持があってこそです。そして、家族が一丸となって後継者の経営をバックアップしなければ、スムーズな事業承継は実現できません。

後継者が決まったら、権限移譲を行いましょう。できるだけ早く経営の中核である人事や労務・新事業に携わらせることで、社員や取引先と後継者の双方で次の経営者であると意識づけを行うことができます。すぐに資産や株式を相続しなくても、後継者が決まったら早急に準備を始めましょう。


まとめ

今回は、投資用不動産を使って、事業承継における相続税を抑制する方法から親族内承継の注意点までまとめて解説してきました。事業を行っている方は、個人事業主であっても法人経営者であっても、不動産を所有している・経営していることで、生前贈与・遺産相続にかかわらず、税金を減らすことが可能です。
そして、親族内承継を検討している場合は、後継者が事業経営をスムーズに行えるよう、社内外問わず周知し、承諾が得られるようできるだけ早期に準備を始めましょう。そして、親族内の公平性に配慮しつつ、後継者に事業と多くの資産を引き継ぐことができるよう理解を求めていきましょう。

2019/12/19時点での情報です。