不動産売買には仲介手数料が必須? 仲介の仕組みと計算方法を理解しよう!
一戸建てやマンション、土地など、不動産を売買するとき、多くの場合、不動産会社に仲介を依頼します。
その際に、「仲介手数料」という費用が発生します。
仲介手数料とは、売主と買主を仲介する不動産会社に対して支払われる成功報酬であり、その報酬を支払うケースがほとんどです。
仲介手数料は意外と高額になることもあり、その相場を知らないまま売買契約を結んでしまうと、「思ったよりも手元にお金が残らなかった」という事態に陥りかねませんので注意が必要です。
この記事では、「そもそも仲介に手数料の支払いは必要なのか?」という点を明らかにした後、「仲介手数料の仕組み」や「不動産会社の選び方」を解説していきます。
家の売買に必要な費用をしっかりと理解して、不当な請求を避け、堅実な資金計画を立てられるようになりましょう。
目次
最後に|仲介手数料を含めて、総合的に良心的な不動産会社を選ぼう
仲介手数料=不動産会社への成功報酬
仲介手数料とは
不動産売買における「仲介手数料」とは、仲介を担当した不動産会社に対して支払う成功報酬のことです。
一般的な不動産売買では、不動産会社(宅地建物取引業者)が、売主と買主の間に入って、話をとりついだり契約条件をまとめたりします。これを「仲介」といいます。
「仲介」を不動産会社に依頼し、売買契約が成立することによって仲介手数料の請求がされるのです。
なぜ仲介を担当する不動産会社が必要か?
仲介手数料は、不動産会社が「売主」と「買主」の間に入り、取引を仲介することで発生します。
ということは、「不動産会社へ仲介の依頼をしないで売買を行えば、仲介手数料は必要ないのでは?」と考える人もいますよね。
しかし、不動産会社へ依頼しなければ、不動産売買に伴うコストや手間、リスクをすべて自分で引き受けることになります。
「新築物件を、売主であるハウスメーカーや不動産会社から直接購入する場合」などは、売主がプロなので不動産会社に仲介を頼む必要はないかもしれません。しかし、売主も買主も一般の個人であるケースは、不動産会社の仲介なしでの売買はあまり現実的ではないといえるでしょう。
たとえば、不動産の売却では、下記のようなコストやリスクが考えられます。
・買い手を探す人的・時間的コスト
家を売るためには、まず、買ってくれる人(買主)を探すことが必要です。
親戚や友人への売却も不可能ではありませんが、その中から買主が見つかるかどうか定かではありません。
その土地の不動産会社であれば、「近隣へチラシを配る」「顧客へ宣伝する」などの手段で買主を探すことができますが、一般の個人が同様の手段を取ることは難しいでしょう。
・売却の手続きを非専門家同士で行うリスク
不動産売買には、「契約条件の交渉」や「売買契約の締結」、「売買物件の引渡業務」など専門的な知識が必要な手続きがたくさんあります。
これらを滞りなく進めるためには一定以上の不動産売買の知識と経験が必要です。
不動産会社に手続きを任せれば、不動産仲介の手数料を支払うだけで、こうしたコストやリスクを一手に引き受けてもらうことができます。
このようなコストやリスクを避けるために、不動産会社による仲介を依頼し、その成功報酬である仲介手数料も必要になるのです。
これだけは知っておこう! 仲介手数料3つのポイント
不動産売買の仲介手数料には、法律で定められたルールがあります。
この章では、売主が知っておくべき3つのルールについて解説します。
• 仲介手数料は、法律で上限が決められている
• 支払うタイミングは、事前に明確にしておく
• 仲介手数料以外の費用が発生する場合もある
それでは、一つずつ解説していきましょう。
仲介手数料は、法律で上限が決められている
不動産会社への報酬である仲介手数料は、「宅地建物取引業法」と「国土交通省告示第 172 号」によって、売買代金(税抜)の金額区分ごとに上限が定められています。こちらの簡単な早見表をご覧ください。
※ただし、宅地建物取引業者が課税義業者である場合に限ります。
たとえば、売買代金が3,000万円だったとしましょう。
このときの仲介手数料の上限額は、以下の1)~3)の合計金額となります。
1,200万円以下の部分
200万円×5.5%=11万円
2,200万円超400万円以下の部分
200万円×4.4%=8.8万円
3,400万円を超える部分
2,600万円×3.3%=85.8万円
1~3の合計金額 105.6万円
※上記計算式の料率は、2024年2月現在の消費税率に則したものです。
上記の計算が正式な方法ですが、複雑ですし間違いが起きやすいのも事実です。
そこで、以下のような簡略的な計算式があります。
(売買価格×3.3%+6.6万円)=仲介手数料(税込み)
3,000万円×3.3%+6.6万円=105.6万円
※ただし、400万円以上の売買価格に限ります。
なお、上記の早見表あるいは速算式で算出した金額は、あくまで仲介手数料の「上限額」です。
支払うタイミングは、事前に明確にしておく
仲介手数料は成功報酬なので、原則として「売買契約が成立したとき」に請求権が発生します。
ただし、「売買契約が成立した瞬間に仲介手数料を支払うべきか」というと、そうではありません。というのも一般的にこの時点では、不動産の引渡まで完了していない場合が多いからです。
どのタイミングでどれだけの仲介手数料を支払うかは、不動産会社と話し合って、事前に決めておくようにしましょう。
不動産売買の流れについては、下記記事を参考にしてくださいね。
仲介手数料以外の費用が発生する場合もある
不動産会社が仲介業務を行う上で、広告作成や営業活動を行いますが、通常の営業活動において発生する費用を仲介する相手に請求することはできません。売買契約が成立した際に発生する仲介手数料に、広告費用や営業活動費は含まれているのです。
ただし、以下3点を全て満たしている場合に限り、例外的に費用を請求できる、とされています。
1 依頼者(売主)の依頼によって発生した費用である
2 通常の仲介業務では発生しない費用である
3 実費である
たとえば、不動産会社に対して、「新聞紙面に、売りに出す不動産の全面広告を出してほしい」と依頼したとします。
新聞紙面広告は比較的高額であり、仲介手数料の範囲内で賄うことが相当でない場合があります。つまり、新聞広告掲載費用は「依頼者(売主)の依頼によって発生した費用」であり、「通常の仲介業務では発生しない費用」なので、費用の全額を請求されても妥当だといえるでしょう。
一方で、同じ不動産会社に対して「売りに出す不動産について、建物の見取り図や条件などをまとめて、店頭に広告として掲示してほしい」と依頼したとします。
すると、不動産会社は、建物の見取り図や条件などを記載してプリントアウトし、店頭に掲示しますね。
この場合、プリントアウトの費用などは「依頼者(売主)の依頼によって発生した費用」だといえます。しかし同時に、この広告方法は一般的なものであり、「仲介手数料の範囲内で賄うことができる費用」であるといえます。
したがって、この場合は不動産会社に費用を請求されることは妥当とはいえません。
不当な請求を受けないためにも、3つの条件をよく理解しておきましょう。
正しい不動産会社選びのための3つのポイント
不動産売買を気持ちよく行うためには、仲介手数料についての理解だけでなく、安心して取引できる不動産会社の選び方を知っておく必要があります。
この章では、良い不動産会社を選ぶために必要な、以下3つのポイントを解説します。
• 宅地建物取引業免許の有無など、会社の情報を集めよう!
• 「仲介手数料の安さ」を基準に不動産会社を選んではいけない
• 連絡のスムーズさ、報告の丁寧さをチェックしよう!
宅地建物取引業免許の有無など、会社の情報を集めよう!
まず、不動産会社の情報を集めることから始めましょう。
宅地建物取引業の免許の有無はもちろん、事務所の所在地や過去の行政処分の有無、他事業との兼業状況などの情報は、良し悪しを判断する材料になります。
不動産の売買や仲介を事業として行うには、必ず免許が必要です。したがって無免許の不動産会社は、決して利用してはいけません。免許番号は不動産会社のWebサイトや広告などに記載されているので、確実にチェックしておきましょう。
これを見るだけでも、「不動産会社の免許権者」と「免許の更新回数」を確認できます。
たとえば、「国土交通大臣(03)第012345号」という免許番号があるとします。
このうち、「国土交通大臣」が免許権者です。
宅地建物取引業の免許は、「2つ以上の都道府県の区域内に事業所がある場合は、国土交通大臣の免許」が、「1つの都道府県の区域内のみに事業所がある場合は、事務所所在地を管轄する都道府県知事の免許」が、それぞれ必要となります。
したがって、この免許番号の不動産会社は、2つ以上の都道府県の区域内に事業所を持っていることがわかります。
「(03)」の部分は、免許の更新回数を示します。
宅地建物取引業の免許は、5年に1回の頻度で更新しなくてはなりません。
したがって、更新回数が3回ということは、少なくとも10年以上は不動産会社として営業していることがわかります。営業歴の長さは、信頼度や経験の豊富さの指標となります。ただし、東京都知事(10)の宅建業者が業務拡張で国土交通大臣免許に切り替えた場合、国土交通大臣(1)になります。不動産業歴が長く、経験が豊富であっても更新回数が少ない宅建業者も存在します。
さらに、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」では、宅地建物取引業者の検索も可能です。
この名簿には以下のような情報が記載されています。
• 免許の年月日
• 代表者氏名
• 事業所の所在地
• 行政処分の履歴と状況 など
免許番号や宅地建物取引業者名簿から得られる情報だけで、不動産会社の良し悪しが完全に判断できるわけではありません。
とはいえ、参考情報の一つにはなりますし、絶対に頼んではいけない会社=無免許の会社は見抜けるようになります。集められる情報は、確実に集めておきましょう。
「仲介手数料の安さ」を基準に不動産会社を選んではいけない
この記事で説明してきた「仲介手数料」ですが、1,500万円の不動産を売買したなら仲介手数料の上限は55万円強と、なかなか高額ですよね。
ですから、仲介手数料が55万円の会社と20万円の会社とがあった場合、20万円の会社の方が魅力的に感じられると思います。
ただし、「仲介手数料が安いから」という理由だけで、不動産会社を選ぶことはお勧めしません。
仲介手数料半額、あるいは無料を売りにしている不動産会社も存在します。
しかし、「仲介手数料」とは、すなわち「仲介する不動産会社の利益」です。これを安くするためには、「利益」か「コスト」のいずれかを削る必要があります。
そして、コストを削るために、例えば次のような施策をとられる可能性が考えられます。
• 広告の露出機会をカットして販売コストを抑える
• 成約時期を早めて人的コストを抑えるために、売却価格を下げる
仲介手数料が安くなったとしても、結果的に不動産が売れなかったり、当初の売却予定価格よりも安く売ってしまったりすれば、最終的に得をしたとはいえません。
また、仲介手数料の上限額を提示してきた不動産会社に対して、値引き交渉をしようと考えている人もいるかもしれません。値引き交渉自体は問題ありませんし、不動産会社によっては、値引きに応じる場合もあります。
ただし、担当者も人間です。自分たちの利益である仲介手数料を値切られれば、利益の大きい他の不動産に比べて、売却活動に消極的になってしまう可能性があります。
もちろん、「仲介手数料が安かったり、値引きに応じたりする不動産会社は、絶対に売却活動で手を抜いている」なんてことはありません。
しかし、仲介手数料を安価にすることで、そういったリスクを負う可能性があることは事実です。
仲介手数料を安く設定している不動産会社には、なぜ安いのか、他で帳尻を合わせることにはならないか、確認してみても良いでしょう。
また、仲介手数料の価格交渉をする場合は、相手を尊重して誠意ある対応を心がけましょう。
連絡のスムーズさ、報告の丁寧さをチェックしよう!
不動産会社と契約を結ぶ前に、相談や査定などについて、やり取りを行いますよね。
その際、連絡のスムーズさ、報告の丁寧さは確実にチェックしておくようにしましょう。
契約前の段階で連絡に滞りがある会社は、法的に定められている報告義務も怠る可能性があるからです。
不動産会社は、売買を行いたい個人と「媒介契約」と呼ばれる契約を結びます。
媒介契約には3つの種類がありますが、そのうち「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」には、「業務処理状況の報告義務」が定められています。定期的に、物件の売買仲介業務に関する経過報告をしなくてはならないのです。
契約前からレスポンスが悪い会社は、この法的義務を怠る、あるいは軽んじる可能性があります。
また、「一般媒介契約」と呼ばれる媒介契約の場合は、上記の報告義務がありません。
義務がなくても、連絡がマメな会社であれば、適切な経過報告を行います。しかし、契約前から連絡が滞るような会社であれば、経過報告はあまり期待できず、不安が残ります。
不動産の売買活動は、時には半年ほどの長期にわたる作業となります。
パートナーとなる不動産会社との連絡で不安が残り、余計なストレスを溜めなくてもいいように、契約前にやり取りのスムーズさはチェックしておくことをお勧めします。
最後に|仲介手数料を含めて、総合的に良心的な不動産会社を選ぼう
意外と高額となりがちな、不動産売買の仲介手数料。
その仲介手数料の意味や仕組み、不動産会社の選び方は理解できましたか?
仲介手数料の安さは、もちろん重要であり魅力的な要素です。
しかし、「その安さがどういった理由で実現できているのか」は、必ず確認するようにしましょう。仲介手数料の安さだけを追求して、売買活動の費用を抑えられてしまっては、本末転倒だといえます。
安さだけに固執せず、この記事で解説した仕組みやルールを理解した上で、安心して取引できる不動産会社を見つけてくださいね。
2017/01/26時点での情報です。