「仮住まい」って何? 失敗しない選び方と条件別費用シミュレーション
仮住まいとは、一時的に住む仮の家のことです。
建て替えや大規模なリフォームのとき、あるいは住み替えで住居を売却したもののまだ新居が決まっていないときなどに利用されます。
自宅に住めないから、一時的に家を借りる。理由や目的はシンプルなのですが、実際に探し始めてみると、意外に困るポイントがたくさん出てきます。希望する立地や予算と合う物件がなかったり、数カ月という短期間しか住まない前提があるため入居を断られてしまったり、などの問題です。
今回は、仮住まいを選ぶポイントとスムーズな借り方、そして住み替えのときに仮住まいを発生させない方法を紹介します。
目次
業者斡旋? それとも自力手配? 仮住まい物件の効率的な探し方
賃貸? UR賃貸? ウィークリー? 3種類の選択肢を徹底比較
UR賃貸住宅(旧公団住宅)|タイミングよく見つかれば仮住まいに最適
仮住まいが必要な3つのシチュエーションと仮住まい期間
仮住まいが必要とされるシチュエーションは、主に下記3種類です。
- 大規模なリフォーム・リノベーション
- 建て替え
- 住み替え
1と2は、自宅を補修・改修するため今の住居に住めなくなるケースですね。
この場合、仮住まいの確保は必須です。
施工プランの打ち合わせと同時進行で、仮住まいの確保も進めましょう。
3つめの「住み替え」の仮住まいは、「自宅を売却したが、まだ新しい家が決まっていない」あるいは「現在住んでいる家の退去時期と新居への入居時期が合わない」という状況で発生します。
一般的に、住み替えは売却と購入のタイミングを合わせて、できるだけ仮住まいを発生させないようにスケジュールを組みます。それができなかった、あるいは意図的にしなかった場合に仮住まいが発生するので、仮住まいの期間は状況によってまちまちです。
住み替えの仮住まいについて調べている方は、この記事の最後で「仮住まい無しで住み替える方法」を紹介しているので、参考にしてください。
業者斡旋? それとも自力手配? 仮住まい物件の効率的な探し方
仮住まいの探し方には、ハウスメーカーや施工業者、仲介業者などに斡旋してもらうケースと、自分で手配するケースがあります。
補修・改築や売買を担当する会社に斡旋してもらう
建て替えの場合、ハウスメーカーが抱えている仮住まい用の物件を斡旋してもらえることがあります。また、リフォームやリノベーションの場合も、施工業者が物件を保有していたり、不動産業者と提携していたりすることがあります。
紹介してもらえる物件がないか、施工プランの打ち合わせ時に相談しておきましょう。
住み替えの場合も、仲介業者や新居の販売会社から物件を斡旋してもらえることがあります。
こちらも一度、最初の計画立てのときに相談してみましょう。
建て替えやリノベーションと異なり、住み替えは仮住まいを避けることが不可能ではありません。まずは「仮住まいはできるだけ避けたい」旨を相談したのち、「仮住まいが避けられない場合は、自分の希望に沿った物件を斡旋してもらえるのかどうか」を確認しておきましょう。
補修・改築や売買を担当する会社に仮住まいを斡旋してもらうメリットは、「仮住まい探しの手間が減ること」と「仲介手数料などが必要ないケースが多いこと」です。
希望する条件を伝えておけば会社側で物件を選定してくれますし、引越し業者の手配まで一括して行ってくれる場合もあり、手間はかなり省けます。
また、売買仲介や施工とセットなので、仮住まいの仲介手数料などは割り引かれることが珍しくありません。
ただし、どんな会社であっても、抱えている物件数には限りがあります。タイミングによっては空きがなかったり、そもそも近所に物件がなかったり、という状況も珍しくありません
希望する条件の物件があるならいいのですが、ない場合は自分で探し始められるように、打ち合わせ段階で早めに確認することをお勧めします。
【check】補修・改築や売買を担当する会社による斡旋のメリット・デメリット
メリット:仮住まい探しの手間が減る・仲介手数料などが割り引かれるケースが多い
デメリット:業者の保有物件やタイミングによって、希望する条件の物件がない場合がある
自分で物件を探す
補修・改築や売買を担当する会社からの紹介では希望する条件の物件がなかった場合、自分で仮住まいを探すことになります。
斡旋してもらう場合と異なり、売買や施工と一括して進めることができないため、手配には時間と手間がかかります。しかし、絶対に妥協したくない条件がある場合は、納得のいく物件を自力で探した方がよいケースもあります。
自力で探す場合、主な方法は下記2つです。
- 地元の不動産屋で探す
- 仮住まい専門業者に相談する
ひとつずつみていきましょう。
自分で探す方法1:地元の不動産屋で探す
仮住まい選びでは、これまでの生活のスタイルを崩さないために、できるだけ近隣で物件を探す人がほとんどです。会社への通勤や子どもの通学を考えると、一時的とはいえ住居が遠方に移ってしまうと困ってしまいますよね。
そんなとき、地元密着型の不動産屋であれば、近場の物件を探しやすいでしょう。
全国展開している企業では扱っていない物件も見つかる可能性があります。
ただし、仮住まい探しの場合、一般的な不動産屋では取引を断られるケースもあります。
短期間の入居では貸主にとってのメリットが少なく、入居を嫌がられやすい傾向にあるからです。
仮住まいであることを隠して契約する人も時々いるようですが、短期解約の違約金を請求されるなど、トラブルに繋がりやすいためお勧めしません。
「仮住まいを探している」という前提条件を伝えた上で、親身に対応してくれる不動産屋を探しましょう。
【check】地元の不動産屋のメリット・デメリット
メリット:近所の物件が見つけやすい・大手では取り扱っていない物件が見つかる可能性がある
デメリット:短期入居は敬遠されるため、仲介を断られる場合がある
自分で探す方法2:仮住まいの専門業者に相談する
不動産屋の中には、仮住まい用の物件を専門に取り扱っているところがあります。
専門業者であれば、「短期間の入居だから」と仲介を断られることはなくなります。
また、仮住まい探しでありがちな「工事開始まで2週間しかないので、それまでに確実に入居したい」「初期費用をできるだけ抑えたい」などの要望にも応えてくれるでしょう。
賃貸物件以外にも、3章で後述するウィークリーマンションなどを紹介してくれる場合もあります。
ただし、仮住まい対応の物件はあまり多くなく、業者数も少ないため、地域によっては利用できないことがあります。
【check】仮住まい専門業者のメリット・デメリット
メリット:仮住まい特有の悩みに対応してもらえる
デメリット:専門業者の数が少なく、地域によっては利用できないことがある
賃貸? UR賃貸? ウィークリー? 3種類の選択肢を徹底比較
仮住まいを選ぶときにもっとも気になるものは、やはり費用ですよね。
仮住まいの代表的な選択肢である「賃貸住宅」「UR賃貸住宅(旧公団住宅)」「ウィークリーマンション」の3種類では、それぞれ必要な費用が変わってきます。
下表は、その3種類を費用面から比較してまとめたものです。
※東京都23区、2DK、敷金負担6万円・同一区内の引っ越しを想定しています。
※場所や条件によって、実際の費用は変動します。
※赤字:初期費用 青字:敷金の返金額 緑字:賃料及び貸倉庫代 を表しています。
※敷金返還金額とは、敷金のうち、負担すべき金額を差し引いて返還される金額のことです。
今回は例として、敷金負担を6万円とみなします。
パッと見ると、UR賃貸住宅が最もお得な気がしますよね。
しかしこれらの選択肢には、費用面以外にもさまざまな特徴があり、必ずしもUR賃貸が最適な選択肢だとは言い切れません。
ひとつずつ特徴を解説していくので、ご自身の状況に当てはめて考えてみてください。
一般賃貸|高額だが、さまざまな要望に応えられる柔軟性が魅力
仮住まいの選択肢として真っ先に思い浮かぶのが、一般的な賃貸住宅です。
他選択肢よりも圧倒的に物件数が多いため、「特定の駅近く」「ペット可」「楽器可」などの希望を比較的叶えやすい点が魅力的です。
また、UR賃貸やウィークリーマンションと異なり、一戸建てを借りられることもポイントです。もともと戸建てに住んでいて荷物が多い場合などは、住居と近い条件の仮住まいを探しやすいといえるでしょう。
ネックとなるのは、やはり初期費用です。
物件によっては敷金や礼金が2カ月分かかるケースもありますし、大家と直接交渉でない限り、仲介手数料も必要です。上表の費用目安でも、月額の賃料は他とほとんど変わりありませんが、初期費用が圧倒的に高額ですね。
また、先述した通り、一般賃貸は短期間の入居を敬遠する傾向にあります。
仮住まいとしての入居を許容されるかどうか、そして初期費用をどこまで減額できるかが一般賃貸借用のポイントです。
【check】一般賃貸を仮住まいにするメリット・デメリット
メリット:さまざまな要望に応えられる柔軟性の高さ
デメリット:初期費用が高額・短期間の入居を断られる可能性がある
UR賃貸住宅(旧公団住宅)|タイミングよく見つかれば仮住まいに最適
UR賃貸住宅(旧公団住宅)は、条件さえ満たせば仮住まいに最適な選択肢です。
礼金や仲介手数料が不要なため、一般的な賃貸よりも初期費用が低額です。
敷金は賃料の3か月分とやや高額ですが、原状回復に必要な費用以外は退去時に戻ってきます。
また、「一年以上住まなくてはならない」などの期間的な縛りがないため、短期間で出ていく仮住まいでも断られることがありません。
間取りも単身向けからファミリー向けまで幅広くあり、さまざまな世帯に対応できます。
賃料はまちまちなので民間と比べて高いとも安いともいえませんが、民間賃貸の相場と同程度、もしくは少し高い程度に見積もっておけばよいでしょう。
ただし、UR賃貸の数は限られている上に、入居は先着順です。
人気物件が多いため、空きが出てもすぐに借りられてしまうのが現状です。
入居時期をずらせない仮住まいの場合、タイミングよく空きが出るかどうかがポイントとなります。
また、ペット不可の物件が多いため、ペットを飼っている場合は選択肢としづらいでしょう。
【check】UR賃貸を仮住まいにするメリット・デメリット
メリット:初期費用が少ない・短期間でも問題なく借りられる
デメリット:空きが少ない・ペット不可の物件が多い
ウィークリーマンション|短期間の単身・少人数世帯向け
短期間の仮住まいなら、ウィークリーマンションを視野に入れてもよいでしょう。
料金は日額5,000円程度、ワンルーム~1DK程度の物件がほとんどです。
賃料は同条件の賃貸物件と比較すれば割高ですが、初期費用が契約手数料のみ、退去時も清掃代を払うだけ、という手軽さが魅力です。
半年などの長期間になれば費用がかさみますが、1カ月程度であれば他選択肢よりも安く抑えることができます。
その一方で、広さが確保できないため、家財は貸倉庫(トランクルーム)などに保管する必要があります。
また、大人数での入居にも向かないため、単身もしくは少人数の世帯向けだといえます。
他にも、手軽に借りられるがゆえに、入居者にもさまざまな人がいることを理解しておかなくてはなりません。
単身~3人程度の少人数世帯の、短期間の仮住まいには向いているといえるでしょう。
【check】ウィークリーマンションを仮住まいにするメリット・デメリット
メリット:初期&退去費用が少ない・手軽に借りられる
デメリット:家財を保管できない・大人数には向かない・長期になればコストがかさむ
建て替えやリノベーション・大規模リフォームでは仮住まいが必須なので、先述した選択肢から自分の状況にあったものを選ぶ必要があります。
仮住まい無しで住み替える3つの方法
しかし住み替えの場合、仮住まいは必須ではありません。そもそも仮住まい無しで住み替えできれば、賃貸かウィークリーかで悩むこともありませんよね。
住み替えは、「家を売る」「家を買う」という2つのイベントを両方進める必要があり、非常に手間がかかります。
ただでさえやるべきことが多くて大変なのに、仮住まいが必要になってくると、より多くの時間と労力を費やすことになります。
ここでは、できるだけ避けたい「住み替えの仮住まい」を避ける方法を、3種類紹介します。
基本中の基本「退去と入居のタイミングを合わせる」
仮住まい無しで住み替えるもっとも基本的な方法は、「退去と入居のタイミングを合わせること」です。
売却した家の退去日と、購入した新居の入居日を合わせられれば、1回の引越しで全てを済ませられます。理想的な住み替えパターンといえるでしょう。
しかし売却のタイミングは買い手次第なところもあり、ぴったり合わせることはなかなか難しいのが実情です。
数日程度なら「引越し業者の荷物預かりサービス+ホテル」
仮住まい期間が数日程度であれば、「引越し業者の荷物預かりサービスを利用して、住まいはホテルで済ませる」という選択肢があります。
大手を始めとして、引越し業者には荷物の一時預かりサービスを提供しているところがあります。数日程度であればこのサービスを利用して、自分や家族はホテル住まいで済ませると手間が省けます。
預かってくれる期間や費用は業者ごとに違うので、複数業者に相見積もりをとって比較検討するとよいでしょう。
仮住まい無しで住み替えできるサービスを利用する
「退去から入居までの期間がどうしても一カ月以上空いてしまう」「売却を優先的に行ってから、じっくり購入を行いたい」という場合は、仮住まいなしで住み替えられるサービスを探して利用することをお勧めします。
たとえば、コスモスイニシアには、賃料を払うことで売却した家に住み続けられるサービス「住みながら買取り」があります。
「住みながら買取り」は、住み替えの労力を軽減するサービスです。
一般の方に売却するのではなくコスモスイニシアが買取を行うため、最大2年間、賃貸として売却後の家に住み続けることができます。
仮住まいが不要であることはもちろん、売却活動の際の面倒な内覧対応も不要なため、住み替えにまつわる手間を極限まで減らしたい方に最適です。
詳細:詳細:住みながら買取り
近年は、住み替えに力を入れる不動産会社も増えてきています。
利用を検討している会社に該当するサービスがないかどうか、事前に問い合わせておきましょう。
最後に|自分の条件に合った仮住まい先を選ぼう!
仮住まいは、期間や世帯人数、予算や条件によって、ベストな選択肢が変わってきます。
仲介業者やハウスメーカーなどに相談して決められれば一番よいのですが、紹介された物件に気に入るものがなかったり、そもそも紹介してもらえなかった場合は、下記チャートを仮住まい選びの目安にしてください。
後悔しない仮住まいを選ぶためには、求める条件を全て書き出して、優先順位をつけていきましょう。
「子どもが通学できる範囲内であることは必須条件」「ペットはペットホテルに預けるのではなく、仮住まい先で一緒に暮らしたい」など、必要だと思うことは全て書き出していきます。条件を一覧化することで、自然と妥協できる範囲とできない範囲が明確になってくるはずです。
あとは、「妥協できない範囲」と「費用や物件の空き具合などの、実際の状況」を照らし合わせながら、後悔しない仮住まい選びを実現していきましょう。
2016/12/16時点での情報です。