僕が小学校3年生になった時のこと。
中学2年生だった兄が、家から歩いて3分のところに部屋を借りた。
理由は「勉強に集中できる部屋が欲しいから」。
当時、兄の通信簿はオール5。
家が狭かったため、親父は二つ返事で部屋を借りることを許可した。
ところが兄は、その部屋で遊びに目覚めた。
僕は高校生になるまでの7年間、その6畳のアパートに毎朝兄を起こしに行き、夜は夜で、ちゃんと帰って勉強しているかを確認に行く日々だった。
親父の指示で。
結局兄は、いつ行ってもいないことが多かった。
だから僕は、そんな兄の部屋で、レコード、ポスター、カセットテープ、洋服、
雑誌、その他嗜好品の数々を見たり着たり聴いたりしていた。
僕は知らず知らずのうちに、
兄から多大な影響を受けて高校生になったのである。
今もふと、ああいうおもちゃ箱のようなファンタジールームが欲しいと思う。
現実から距離のある時間が持てて、趣味嗜好を膨らませてくれるスペース。
そんな部屋が欲しい。
この部屋ならそんな楽しみを実現させてくれるかも。
そんな気がした。
帽子が好きでよくかぶっている。でも、帽子は眼鏡と同様、いくら気に入っても似合わなければそれでアウト。似合う帽子と出会ったら、迷わず即買いしている。
帰宅して、玄関に花があるとホッとする。花瓶の横にあるのは〈ジョージ・ジェンセン〉の貯金箱〈マニファント〉。愛らしい象のフォルムが好きだ。靴は〈トム・フォード〉のもの。ボックスまで美しい。
1年に1回くらい、無性に食べたくなるのがドーナッツ。どうせ食べるなら、ケーキスタンドに積み上げて食べたい。ドーナッツと言えばやっぱりミルク。グラスはカイ・フランクのカルティオの復刻版。現行のカルティオより薄いところが気に入っている。
祐真 朋樹Tomoki Sukezane
1965年京都市生まれ。(株)マガジンハウスのPOPEYE編集部でファッションエディターとしてのキャリアをスタート。現在は『UOMO』『GQ JAPAN』『Casa BRUTUS』『MEN’S NON-NO』『ENGINE』等のファッションページのディレクションのほか、著名アーティストや文化人の広告のスタイリング等を手掛けている。パリとミラノのコレクション観覧歴はかれこれ25年以上。