コスモスイニシアがお客さまや社会に提供したいと考えているものは、
住まいや不動産の領域を超えた、“一歩先の価値”です。
そこから生まれたコスモスイニシアならではの商品・サービスや新たな取り組みをお伝えする、
「コスモスイニシアのモノづくり、コトづくり、トキづくり」。
今回ご紹介するのは『nears川崎』(ニアーズ川崎)です。
多様性の尊重と、変化する生活様式の時代における、
「シェアレジデンス」の新たな価値と可能性を担当者に聞きました。
「“ゆるやかな隣人”のいる新しい暮らし。」をコンセプトに、
JR「川崎」駅徒歩4分に誕生した地上14階の「シェアレジデン
ス」。入居者同士のコミュニティ形成を促す専任スタッフ「コ
ミュニティデザイナー」を配置するなど、従来のシェアハウス
や一般的な賃貸住宅にはなかった要素をハード・ソフトの両面
に盛り込み、新たな価値を提案します。
少し弊社の内部の話になりますが、私が所属しているR&D戦略部という部署は、新しい事業を考える組織です。しかし、ただ利益だけを追求することが目的ではありません。コスモスイニシアでは「Next GOOD」というミッションの実現を掲げており、世の中の一歩先を行く価値を追求しています。私たちもこのような考えのもと、変化する社会に対する新たな提案を考え続けています。もちろん、弊社は不動産が専門分野なので、不動産に軸足を置きながら、今求められているのは何かを考え、住まいやレジャーといった幅広い領域から答えを導き出すことが私たちのミッションです。その答えの一つが弊社のアパートメントホテル『MIMARU』であり、『ETOWA KASAMA(エトワ笠間)』のようなグランピング施設でした。
そして、今回の答えが、『nears川崎』というシェアレジデンスなのです。
そもそも、シェアハウスという構想が持ち上がったのは2018年頃でした。当時はシェアハウスの市場が拡大しつつあった頃です。しかし、企画を進めていく中でコロナ禍となり、社会の状況は一変しました。そこで、改めて賃貸にお住まいの単身の方の暮らしやニーズの変化を考え直すことにしました。そこで浮かび上がったのが「孤独感」です。コロナ禍といっても人との接点が全くないわけではありません。しかし、顔を合わせるとしてもオンラインの画面の中。オフラインでは、誰とも会うことはできません。先行きが不透明な世の中で、ずっと一人で過ごすのは本当に孤独感が大きいと思います。そんな方々に、人の温かみを感じたり、身近に人の存在を感じたりしながら、プライベートも大切にして暮らしていただきたいと考えました。
『nears川崎』のコンセプトは「“ゆるやかな隣人”との心地よい暮らし」です。賃貸だけど、誰かと一緒に住まう暮らし。そんな、今までにない新しい価値を『nears川崎』で体験していただきたいのです。
たしかにシェアハウスと言うと、若い人たちが集まって、にぎやかに暮らす場所といったイメージをお持ちになるかもしれません。実際にシェアハウスの市場では、20代前半から半ばぐらいの入居者が多いと言われています。
しかし『nears川崎』では、30代以上の方々も幅広くターゲットにしたいと考えました。その方たちの思考や暮らし方も分析しましたが、毎日深夜まで飲み会やゲームを楽しむような暮らし方ではないと思います。まずプライベートも仕事も大切にしながら、きちんと完結させて、自分のペースで暮らしたいと思っているはずです。
でも会社や同僚との付き合いは、年数を重ねていて少し飽きが来ている。プライベートでは周りの友達のライフテージが変わったりして関係性が少し変化してきている。そこで、今までの友人や同僚ではない誰かとゆるやかにつながれる機会を求めているのではないでしょうか。
その点、シェアハウスであれば、プライベートな空間があって、共用部に行けば少し大人な方たちとつながれる。そして、仕事を完結させる場所も作れます。最初にお話しした「新しい価値」をご提供できる場所になると思いました。
実際にご入居いただいている方々の年齢も幅広く、30代を中心に、下は10代から上は60代までの方がいらっしゃいます。
一般的なシェアハウスは、他の入居者とつながって生活することが基本で、プライベートが少ないというイメージがあります。これに対して『nears川崎』では、「他の入居者との距離感を自分で選べる」ことにこだわりました。
まず、専有部にはシャワー、トイレ、洗面台を完備しました。また、カウンタ―があり、防音性も高いため、在宅ワークも快適にできます。キッチンこそありませんが、ここだけで一人暮らしが完結できる、プライバシーをしっかり保てる空間にしました。
これに対し共用部は、誰かと交流したり、コワーキングスペースのような感覚で仕事ができる空間として作られています。共用部ではありますが一人で過ごせる空間を用意するなど、「他の入居者との距離感を自分で選べる」ことを実現しています。ワーキングスペースとしての機能は従来のシェアハウスではあまり考慮されていませんでしたが、社会の変化とともにニーズが高まっていますので積極的に工夫しています。
また、従来のシェアハウス事業では、建物を新築するというケースはあまりなかったのではないかと思いますが、『nears川崎』は鉄筋コンクリート造の新築です。弊社は分譲マンションの供給に長年の実績がありますが、そのノウハウもしっかりと反映しています。例えば、シェアハウスの中には、壁が薄くて隣の声が聞こえるような物件もあるようですが、『nears川崎』はそうしたプライバシー面でも安心していただけるようにしっかりと作り込まれており、お客さまからも高い評価をいただいています。
このように、従来のシェアハウスとは一線を画す住まいなので、『nears川崎』では「シェアハウス」ではなく「シェアレジデンス」という名称を付けさせていただきました。
シェアハウスは、いろんな人が集まりシェアする場所ですが、前提としてそれぞれの入居者がある程度の価値観やマナーを共有していることがわかっていれば、心理的な安心感がより高まるはずです。
このようなことをサポートするために、『nears川崎』には「コミュニティデザイナー」というスタッフがいます。このスタッフたちは、入居者さんの視点でコミュニティを作り、運営するのが役割で、分譲マンションのコンシェルジュのような「なんでも屋さん」ではありません。『nears川崎』で入居者の皆さまと一緒に暮らしながら、入居者さま同士をつないだり、新しく入居される方が、うまく、緩やかにつながれるようにサポートしたり、新しい価値が生まれるようなイベントやアクションを企画したり、さまざまな情報を入居者の皆さまに発信します。
「コミュニティデザイナー」の選定にあたっては、シェアハウス生活の経験者やコミュニティ形成の実務経験のある方などから選び、さまざまな入居者の方のコミュニケーションをサポートできるように配慮しました。
まず共用部をご紹介しましょう。『nears川崎』では、2階のワンフロアが共用部になります。ここを、いくつかのゾーンに分けて空間を作っています。共用部だからといって、みんなでおしゃべりするだけではなく、何となく人がいる気配を感じながら作業がしたいとか、静かに読書をしたい方もいらっしゃると思います。そこで、多人数で会話が出来る場所、二人で対面しながら会話ができる場所、一人で静かに過ごせる場所など、気分や用途に合わせて使えるように空間をご用意しました。となりのスペースがにぎやかでも、そのとなりには気分転換ができる空間があったり。まさに「他の入居者との距離感を自分で選べる」のです。
専有部については、先ほども少しふれましたが、基本的にはプライバシーがしっかりと保たれる空間としています。外とのつながりをなくして、あえてホテルライクな暮らしをイメージしました。フローリングの床ではなくカーペットを採用したり、間接照明を取り入れたりして、ホテルに住んで、毎日少しウキウキ出来るような、そんな空間にしたいと思いました。セキュリティについてはスマートキーを導入しました。エレベーターには着床制限機能があり、自分の部屋があるフロアにしか利用できません。最近のホテルと同じ考え方ですね。女性専用フロアも設定しています。
先ほど説明したセキュリティなどは、分譲マンションの仕様に近いと思います。また、ゴミ置き場は24時間利用可能です。分譲マンションでは当たり前ですが、賃貸では少ないため非常に喜ばれています。これらは、分譲マンションの経験が活かされた部分といえます。
ビジネススペースとしての機能も意識した共用部ですが、ここには弊社のコワーキングスペース『MID POINT』のラウンジやワークスペースの設計・デザインを参考にしている部分がいくつかあります。また、共用部に用意したテラスは『MID POINT』でも設置した実績がありますが、そこにコタツを置きました。これは、『ETOWA KASAMA』で評判が良かったので取り入れました。こうしたアイデアは結構ありますね。
専有部については、ホテルライクな仕様や、冷蔵庫やデスク&チェアが付属した家具家電付きのような考えは『MIMARU』を参考にしています。
このようなところに、他の事業のノウハウが活かされています。
『nears川崎』では、入居者の方々をつなぐツールとして、コミュニケーションアプリを導入しました。物件内のSNSアプリと考えていただければよいと思います。例えば、新しくご入居された方の自己紹介とか、イベントの告知ですとか、入居者同士でコミュニケーションを取ることができます。また、運営側からのお知らせなども発信します。このほか、賃貸住宅に置いてあるような紙のマニュアルなども、全部このアプリ内で閲覧できます。
「コミュニティデザイナー」も、このアプリ内で積極的にコメントし、コミュニケーションと運営の両面で活用しています。入居当初はなかなか話しにくかったりしますが、SNS内で彼らがコミュニケーションを活性化する役割を担ってくれているのです。
コミュニティ形成については、日常の生活だけではなく、例えば仕事での発展的な関係性などにもつながっていくのではないかという期待を込めて大事にしたいと思っています。入居者の年齢層が比較的高いため、いろんな方がいらっしゃいますので、自然発生的に起きていくと良いのではないでしょうか。
実際に、互いに全然関係のない仕事をされている入居者の方たちの会話の中で、偶然仕事のやり取りが生まれて新しいビジネスになったということも起きています。もちろん、一緒に料理を作ったり何かをシェアすることも、日常的に行われています。
世代は関係なくて、皆さんウェルカムな感じで楽しまれています。親子ほど歳が離れた入居者同士が普通に楽しそうにしゃべってますし、それが新鮮で面白いみたいな感じですよ。何かを求めている人たちがいて、それに対する『nears川崎』の機能がマッチしたという感覚です。
『nears川崎』はまだ1号物件です。今後は、皆さんによりご満足いただけるかたちで、2号・3号物件と展開していけたらと願っています。ただコンセプトのベースが一緒でも『nears川崎』とは別の魅力を持った物件になるかもしれません。同じもののコピーを作っていくのではなく、時代に合わせて柔軟に対応して行くことも、私たちのミッションの一つですから。
また、『nears川崎』も、ある意味でこれが完成ではありません。私たちは「物件が完成したら終わり」だとは考えてはいません。私たちの目的は、お客さまにいかに心地よく、緩やかに住み続けいただくかということです。だから、ハードを作るだけではなく、ソフトも成り立たせていなくてはなりません。そのための「コミュニティデザイナー」や「コミュニケーションアプリ」ですが、そこに入居者の皆さまが加わって、『nears川崎』の心地よい暮らしとコミュニティが続くことが、本当のお客さまへの提供価値なのです。
(掲載のインタビューは2022年2月のものです)